負け犬子犬 ページ13
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隣に座り瞼を閉ざす彼女の美しさは、受験者の目を惹いていた。
その透き通る肌のなんと美しいことだろうか。
夜を閉じ込めたような髪の、ぬばたまを夢みて息をついた。
「やあ。」
音のしない歩みで声をかけてきた男の胸には、301のナンバープレートがある。
「なァんだ、イルミか♤」
普段は黒髪の彼も、今は変装でモヒカン頭のオモチャのブリキみたいな様相をしている。
イルミの目はもうボクなんて見ていなくて、隣の彼女に夢中だった。
「Aは寝てるよ♧困ったものだよ、野獣から守るのも一苦労だ♤」
「野獣？汚らわしい子犬の間違いでしょ？」
鼻で笑って周りの受験者を侮蔑するイルミはカタカタと音を立てて去っていった。
実際、ボクが居なければ彼女は睡眠を摂る余裕などなかっただろう。
青い果実ですらない
そして、気付かれないようにゆっくりと毒を撒き散らすのだ。
その筋書きも悪くは無いけど、Aに恩を売って何かお願いした方が数倍も良い方向へ進むはずだ。
「A、そろそろ起きて♤」
ハンター試験もそろそろ始まる頃。
未だに、ボクらの眠り姫サマは規則正しい呼吸で肩を動かしている。
『やだ、もっとねる。』
そうだった。
Aは寝起きが悪いんだった。
「低血圧だったっけ？ほら、抱っこしてあげるから起きてよ♢」
ボクの言葉も無視して夢の世界に旅立った彼女を抱き上げて、そろそろ始まるだろうと試験管へと体を向けた。
けたたましい騒音を響かせて、始まりの鐘が鳴った。
.
続く
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作者名：楓 | 作成日時：2023年8月13日 3時
