月下美人の君.8

Girl On Fire.2 ページ9

立ちはだかる蒙恬に声を上げる介子坊。

介子坊 「何じゃ小娘ェッ！！」

介子坊が大きくその刃を蒙恬に向けて、

振り上げた瞬間…




…ドシュッ…！！




鋭く尖った鉄の矢が、

振り上げたられた介子坊の腕を突き刺し
貫通する音が響いた。

息もつかさぬ瞬きの合間に…

今度は自分が乗っていた馬の目に矢が刺さる。


鬼のような顔で
矢を射った方向を見ると…




A「本物の小娘はこっち…♡」



女というには、まだ幼い少女が
遠く離れた距離から矢を構えていた。


その瞳からは鋭い光を放ち、見た者の目に焼きつく。

直視してしまった者は、
忘れたくても 彼女の燃上がる瞳が頭から消えない…。



蒙恬 「Aッッ！！」



介子坊 「…(あの娘…！
あの速さで馬を走らせながら
命中させたというのか？！

…しかも、女の分際で…！)」


急所を刺され、介子坊の馬がバランスを崩して倒れる。
それと同時に、誰も止めることが出来なかった快進撃が足を止めた。



その間に、風にように馬を走らせて、
Aを先頭に胡蝶隊が本陣に辿り着く。



A「蒙驁将軍を守れー！


胡蝶隊、……楔形(くさびがた)陣形ッ！！」


胡蝶隊「「「オオオォッッー！！」」」



Aの合図とともに、全員が鬼神となって
足が止まった介子坊の兵士達の横腹をつく。


馬が使い物にならなくなった介子坊だったが、

Aを仕留めようと、狙いを定め立ちはだかる。


相対するAもその一騎討ちに、馬を走らせた。

馬上という有利はあるものの、
介子坊の一振りで複数人の兵士が木っ端微塵となる中、

弓から刀に切り替えて、一騎突っ込んでいくA。


朱龍 「…まずいッ！

(あれを受ければさすがに、

Aでも全身の骨が砕けるぞっ！)」



蒙恬 「ダメだｯ！逃げろッー！！Aッ！！」


彼女を救おうと蒙恬が急ぎ馬を走らせるが
間に合わない。


その場にいた全員がその嵐のような一騎討ちに注目した。



混戦の最中、全員の足が止まり
その場から目が離せない中、
張本人であるAは今まで味わったことのない
不思議な感覚に陥っていた。


A「…(前より力が強くなっている…)」


初めて武神の力をすべて解放した影響か、
普段より力が強くなった気がする。


正面の介子坊が腕を振り上げる動き、


馬の荒い呼吸、


泥水を踏む音、


蒙恬が名前を呼ぶ声、


雨の雫の一滴、一滴が


徐々に動きを止まっていく。

Girl On Fire.3→←Girl On Fire

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す