月下美人の君.8

吉報と凶報 ページ14

その頃、王都咸陽では秦国軍勝利の知らせが早速伝わっていた。

伝令係 「報告ッー！！
秦国軍、勝利ッッー！！」

その報告に、文官達は立ち上がり皆歓喜した。
「あの廉頗をっ！」「祝杯じゃー！」と騒ぐ者達や息を吐き出す者など様々だった。

昌平君 「…(……よし)」

自慢の髭を撫でながらこの男が尋ねる。

呂不韋 「戦の詳細は分からんのか？

…武功を挙げたのは誰じゃ？」

伝令係 「ハッ。
伝わってきているのは垣騎将軍です。
…敵総大将を討ち、勝利を決したと！」

呂不韋 「おおー！なんとあの盗賊が」

伝令係 「そしてついで、

中央軍の将である輪虎を討ち取った
飛信隊の信という千人将と…

敵参謀を討ち取り、本陣に攻め入った
左軍の将である介子坊を戦闘不能にした
同じく千人将・胡蝶隊のAという者です」


昌文君 「んなッ！？(Aだと…？！)」

昌平君 「…！(ついに頭角を現したか…)」


政 「…ッ……A！

そうか、…良くやったな。二人とも。」

伝令の言葉に思わず身を乗り出して、
立ち上がる政。


呂不韋 「………。

誰か知らんがようやった！ハハハ」


そう…笑いながら部屋を出て行く呂不韋に
その考えを読み取るものは誰一人としていなかった。


⭐⭐

薄暗い廊下を一人歩きながら、
その髭を面白そうに撫でる。


呂不韋 「………鶴」


鶴「……ハッ」


音もなく現れたその影は、刺客には似合わず
全身重装備の甲冑を身に纏っていた。


呂不韋 「やはり…お前の一族は皆強いのォ…。

女の身でありながら、


男顔負けの武力。


しかも、あっちの具合も最高と来ている。

だか、その強さ上
皆殺しにしたのではなかったのか？」



鶴「…呂不韋様。大変申し訳ございません。
私が……仕損じてしまったなど…」


跪くその視覚は全身黒ずくめで、性別の判断が難しかったがその声は明らかに女の声だった。



呂不韋 「まあ、よい。

これで新しい玩具も出来た…。

美しい人形の玩具がな。



これは一つ、暇つぶしに

あの少女で遊んでやろうのォ…ハハハッ！」


まんまと王騎に隠されていたとは。

だが、ついに見つけた。


A一族の生き残り。

しかも…武神の力を引き継ぎし女を。


これが笑わずにいられるものか。



今度こそ、我が手に…。


会える日が楽しみじゃ、Aよ。


咸陽に戻っても、また嵐が近づいていることなど
彼女が知る余地もなかった。

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