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「 ねぇ、A〜！ 最近谷くんとどーなの？ 」
「 ど、どうなのって……別に普通だよ 」
「 え、進展ないの？ 二人ともお似合いなのに 」
「 あはは……うん 」
授業が終わるなり、後ろの席の友人が机から身を乗り出して興味津々に悠真くんとのことを尋ねてくる。相変わらず恋バナがすきだなぁ、と苦笑しながらもありのままの事実を伝えれば、驚いたように目を丸くし、数秒後には興味をなくしたのか別の話題を振り始めた。
切り替えの速さに驚きながらもスクールバッグに勉強道具を詰め込み、彼女の話に適当に相槌を打っていれば、彼女は突然私の耳元に口を寄せてひそひそ話を始める。
「 谷くんと言えばさぁ、知ってる？ 早乙女くんのこと 」
「 あぁ、うん。悠真くんと仲良しな子だよね？ 」
「 そうそう！ でさ、この前帰り道に偶然早乙女くん見かけてさ。気になって後をつけたらなんと！ 」
「 ストーカーはだめだよ、彼氏いるんだから 」
「 ストーカーじゃなくて尾行です〜！ ってか今私の彼氏とかの話じゃなくて、 」
「 Aちゃん、谷くんが呼んでるよ 」
早乙女 櫂くん。よく悠真くんから話を聞くことはあるけれど、私は面識がなくどんな人なのかぼやっとしか知らない。そんな私とは違い、情報通の彼女は早乙女くんのことを知っているらしい。尾行基ストーカーをしているのは些かセーフラインが怪しいが、まぁこの子ならやりかねないかな、なんて思考を放棄して彼女の次の言葉を待とうとしたところで、彼女とは別の子に声を掛けられる。
ありがとう、とお礼を伝えてスクールバッグを抱えて教室のドアへと視線を向ければ、そこには悠真くんが愛らしい笑みを浮べてひらひらと手を振ってくれていた。
「 お迎え？ じゃあこの話はまた明日ね！ 」
「 うん、また明日 」
「 じゃあね〜！ 」
目の前の彼女に挨拶を済ませ、小走りで悠真くんの元へと向かえば、急がせちゃってごめんね、となんだが申し訳なさそうな顔でこちらを見てくる。
「 ううん、こっちこそごめんね。いつもありがとう 」
「 あはっ、それは僕が好きでやってる事だから気にしないで！ むしろAちゃんと帰れるの嬉しいし 」
悠真くんはだいすきな笑顔でそう言うと、私の左手を取って走り出す。廊下は走っちゃダメだよ、と注意しなければいけないのだろうけど、惚れた弱みというやつなのか。口から出てくるのは砂糖の塊のような声と笑い声だけで、なんだか少し自分が嫌になった。
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