崩れ落ちる幸せ。 ページ1
＊
液晶テレビにでかでかと映し出されるメニュー画面とゲームのBGMを背景に、コントローローに触れることもなくボクは今日あった出来事を愚痴るように淡々と声に出していく。意図的に同じ話ばかりしているのに、気にも留めないのは流石に酷すぎるんじゃない？ アンタじゃなかったらぶん殴ってたよ、って
「 ねぇ、ちゃんと聞いてんの？ 」
「 うん、きいてるよ。ゲームの話だよね？ 」
「 ちーがーう！ 聞いてないなら正直に言ってよね。別に怒んないんだしさぁ」
「 ほんと？ がっくん『 なんでアンタはボクの話聞いてないわけ！？ 』って頬っぺたを手加減無しにつねりそうだけど 」
「 お望みならつねってあげてもいいけど〜？ 」
さっきから浮かない顔してテキトーにボクの話に相槌を打つ目の前の女の子。こんな可愛くてカッコいいアイドルの幼なじみがいるというのに、彼女はずっと何もない空間を見つめている。ほら、今もこうやって会話をしてるのに彼女はボクと目を合わせない。いつもならちゃんとその目でボクを見てくれるのに。
そんなところばっかり見てさぁ、なに？ 幽霊でもいるわけ？ なんて悪態をつくこともできなくて、明らかに落ち込んでいる彼女に知らんぷり。無理して笑う姿は目を当てられないくらいブサイクで、はぁ、と無意識にため息が零れた。
「 で、なんかあったの 」
「 何にもないよ 」
「 面倒だから嘘とか吐かないでくれる？ 悩みを聞いてあげるって言ってんの。ほら、早く言いなよ。人生の先輩が助言してあげる 」
「 ……なんで悩み事があるってわかったの？ 」
幼なじみなんだから分かるに決まってんでしょ。それともボクのこと馬鹿にしてるの？ と問えば、大げさなくらい彼女はぶんぶんと首を振る。その様子がなんだか面白くてフッ、と鼻で笑えば、彼女も首の動きを止めて、にへ、と困ったような顔で笑った。さっきの動きで乱れてしまった彼女の髪を撫でるように整えて、揺らめくエメラルドみたいな瞳をそっと覗き込むようにして視線を絡めて、ボクは口をゆっくりと開く。
「 ね、A。“ お兄ちゃん ”に話してごらん 」
二つ下の幼なじみ。お互いに一人っ子だったからか、こんなボクを兄のように慕ってくれる女の子。まぁ、ボクはAのことを一回も“ 妹 ”だなんて思ったことはないけど。
「 ……あのね、 」
消え入りそうな声で呟き始めたAの声を一つも拾い忘れないように、そっと耳を傾けた。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
