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「どれだけ時間があれば…心が触れ合うことができるんだろうね」
悟の腕に抱かれたまま私が言うと、ゆっくりと背中に回った腕が程かれどこか驚いた表情をした悟と目が合った
いつもの飄々とした雰囲気は成を潜めている
「ふふ…っ、悟ったら。私が全部知りたいなんて我が儘言えないなって思ってたら同じこと言うんだもん、びっくりしちゃった。でも…嬉しかった、全部知って欲しいって、知りたいって思っててくれてたなんて」
「……花子?」
「これからもいっぱい遠回りしちゃうかもしれないね」
恐らく分かり合うことに最短ルート等ないのだろう
いっぱい迷って、悩んで、時に転んで…そして共に過ごす時間を重ねてやっと辿り着ける
だけど今、私は目の前で自分の欲を必死に押さえ込もうとする悟を見て見ぬふりなんて出来なかった
そうだ、時間は有限なのだ
何故忘れていたのか
過去は振り返らない
私はただ、今心から私を求めてくれる悟だけを信じよう
私も、私の心に従おう
目を閉じ、そっと触れた薬指に嵌められた指輪の感触は冷たくて、でも今まで触れた何よりも温かくて優しかった
「悟に触れて欲しい」
私が言うと、ぐ、と悟が息を飲んだ
瞳は揺れ、理性と本能の狭間で揺れているのが分かった
いざ口に出してみれば、何故今まで覚悟が決まらなかったのか不思議に思う
正直、行為の良さなんて何も分からないが、それよりももっとずっと悟に触れて欲しい
もっと
「………あのね、だいすき…悟」
「……っ」
「今が幸せなのも…、過ぎる時間が優しくて、でも少し寂しく感じるのも…全部悟がいてくれるから」
離れた身体が寂しくて、もう一度、今度は自分から悟に抱き付いた
「もっと…、悟に触って欲しい」
時々怖くなる
目が覚めた時にこれは夢なんじゃないかと
「…もう我慢できねぇけど」
「我慢して欲しくない…だって、全部教えてくれるんでしょう?」
「どこでそんなん覚えてくんの。何の指南書読み漁ってんだよ、今年の文学賞それで決まりだわ」
「ふふっ!じゃあ受賞式に行く時は悟も着いて来てね」
「当たり前だろ」
掛け合いをしながらも合間に触れるだけの口付けを繰り返していると、フワリと身体が浮き、見慣れない目線に驚き無意識に悟のシャツを握ってしまった
おおよそ高価なそれに皺が付いてしまうと焦る前に優しくベッドに倒され身体が沈む
そして私は触れ合う部分から感じる悟の体温に身を任せた
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夏蜜柑 - 初めまして。こちらの作品大好きです、この作品に出会えてよかったと思ってます✧˖°続き楽しみにお待ちしています! (2022年12月25日 1時) (レス) id: dd9c73cc8a (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 続編嬉しいです(≧∇≦)⁎⁺˳✧༚楽しみにしてます! (2022年8月25日 14時) (レス) id: b22c7f7e5f (このIDを非表示/違反報告)
にき(プロフ) - わーい初コメですです。めちゃくちゃ面白いです!続編楽しみにしてます! (2022年8月20日 1時) (レス) @page50 id: 219a3eddad (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - ameyoさん» こんばんは!忘れた頃の返信でもうしわけないですっ。読んで貰えて感想までくださってとっても嬉しいです。ありがとうごさいます!(´▽`) (2022年8月20日 0時) (レス) @page50 id: 9c488eb26d (このIDを非表示/違反報告)
ameyo(プロフ) - 一気に読み進めてしまいました(^^)涙が止まらなくて止まらなくてとっても感動しました!ありがとうございます!こんな素敵な物語に出会えて感動です。後日談もっと読みたいです!お体に気をつけてください!更新楽しみにしてます! (2022年6月14日 2時) (レス) @page49 id: 9a4641eaa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのん | 作成日時:2021年4月26日 3時