▼ ページ13
レジ前にいたこともあり会計は既に終えていたらしい
私の手を掴んだ悟は翔くんにヒラヒラと手を振り、そのままカランと音と共に店を出た
慌てて「お疲れ様でした」と声を掛けるが身体はあっという間に店外へ
しかし、どうやら聞こえていたらしい
内からガラス越しに私に向けて手を降る翔くんを視界に認め私も手を振り返した
悟が目隠しの向こうで翔くんを睨み付けてたなんて、勿論私が知る由もなかった
「今日は夜ご飯どうしようか?任務は?」
「突発が入らない限りフリーだよ」
「珍しいね」
感心した様に言うと悟はおどけて見せた
「たぁ〜まにはこんな日もないと!可愛い新妻とイチャイチャする暇もないなんて、いい加減にしてくれないとボイコットしちゃう」
「お魚とお肉どっちがいい?」
「…………肉」
内心珍しい系統の冗談だな、と思いながら返すと何とも微妙な顔で答えてくれる
外では人を煽る冗談がまるで息をする様にポンポン出てくる悟だが、家では殆んど言わない
……家の中では安心してくれているのか、はたまた反応の鈍い私相手じゃ面白くないのか
恐らく後者だな
そもそもそういう冗談をよく言われてたのは…
『みーづき!クソ真面目に授業受けてないでザボろーぜ。アイス買い行こ。俺と少しでも一緒に居られて光栄だろーが』
ふ、と高専時代の一コマが頭に浮かんだ
そう、お姉ちゃんだ
悟は意外な所で誠実だ
付き合う時も結婚する時も『好き』も『愛してる』も、それこそ結婚指輪でさえなかった
冗談は言っても嘘は言わなかった
言ってくれなかった
私を連れ戻す時までは
きっと、だからこそすんなり離婚届を出せたのだと思う
何も持ってなかった私は、後ろ髪引かれるものも何もない
決意した瞬間から驚く程自由になったのだ
悟とあれこれ掛け合いをしながら買い物を済ますと、さも当然の様に私の手から買い物袋を取った悟が歩き出す
あ、と慌てて追おうとすると荷物を片手だけで持った悟が空いた手で私の手を掴んだ
突然の温もりに戸惑う私に悟は気付いてるのかいないのか、構うことなく歩みを進める
「行こ、花子」
「……うん」
振り返ってきた悟があまりにも柔らかく微笑むものだから、離して貰うための言葉を発するために開いた口をつぐんだ
まあ…いい、のかな?
一体自分は誰に言ってるのか
ズッシリのし掛かる疲労を自覚しながら二人並んで帰路に着いた
1646人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏蜜柑 - 初めまして。こちらの作品大好きです、この作品に出会えてよかったと思ってます✧˖°続き楽しみにお待ちしています! (2022年12月25日 1時) (レス) id: dd9c73cc8a (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 続編嬉しいです(≧∇≦)⁎⁺˳✧༚楽しみにしてます! (2022年8月25日 14時) (レス) id: b22c7f7e5f (このIDを非表示/違反報告)
にき(プロフ) - わーい初コメですです。めちゃくちゃ面白いです!続編楽しみにしてます! (2022年8月20日 1時) (レス) @page50 id: 219a3eddad (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - ameyoさん» こんばんは!忘れた頃の返信でもうしわけないですっ。読んで貰えて感想までくださってとっても嬉しいです。ありがとうごさいます!(´▽`) (2022年8月20日 0時) (レス) @page50 id: 9c488eb26d (このIDを非表示/違反報告)
ameyo(プロフ) - 一気に読み進めてしまいました(^^)涙が止まらなくて止まらなくてとっても感動しました!ありがとうございます!こんな素敵な物語に出会えて感動です。後日談もっと読みたいです!お体に気をつけてください!更新楽しみにしてます! (2022年6月14日 2時) (レス) @page49 id: 9a4641eaa7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かのん | 作成日時:2021年4月26日 3時