だから、すき 【短編集】

大好きなひと　＃９ ページ6

「ぱぱのこと、好きなひとー！」



『あーい！！』



「かわいい…」






卓は、

愛娘に自分のことを好き、と言わせるのにはまってる。









「ママのことも好きだもんねー？」



「パパのことのほうが好きやもんねー？」




きゃっきゃ、と手をぱちぱち鳴らして、


それすらもかわいくて仕方ない卓は


ぎゅう、と娘を抱きしめる。









「…ままは、どうなんかねー？」


「？？」


「ままはぱぱのこと好きなひとかなー？」







私が後ろに立ってるのを良いことに、

娘に聞くように、喋る卓。



娘が答えるはずがないけど、


なんだかわかった様子で


近くにあった、おもちゃへと意識が移る。









娘が遊びだしたのを見て、

卓がカーペットから立ったから、


逃げるようにして
夜ご飯の準備に取り掛かる。









「A、」



「なに」



「どうなん」



「なにが」



「いや、さっきの」







答えて、と


後ろから腰をホールドされる。








「…俺は、大好きじゃないけどね、」



「なに、嫌い？」



「はあ？違うに決まってるでしょ、」









持っていた調理器具をそっとまな板の上に置かされて、



娘が生まれる前と変わらない、



抱きしめられた瞬間の彼の匂いが
体中に広がる。









「愛しとーと、」




「…！、うん」









私もだよ、と小さく答えれば、




知ってる、ってキスで答えてくれる彼は、









(娘が知らない、私の卓の好きなところ)

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