迷子のこころ ページ2
グループとしての仕事よりも個人の仕事の方が多くなってきて、それぞれが同じ方向に向かっていることは頭で理解していても心が追い付かなかった。
『……』
だれもいない楽屋の中で先日発売されたアルバムに収録した約束を流す。
SnowManとして正式な初のソロ曲だった。
なんで私だけソロ曲なのかなどといった声もあったけど、この曲がよかったという声もあってほっとしていた。
「Aー！また落ち込んでんだろ！ネガティブ撃退！」
『……佐久間、いつの間に』
「ノックしたよ、俺。返事ないのにソファーで曲流してっから。気が付かなかった？」
視界いっぱいに佐久間が映りこんできて、驚いていれば佐久間はくふくふと笑った。
ノックの音にも気が付かないほど集中していたんだと気づかされる。
「せっかくのしげとの共演も終わっちゃったから落ち込んでんの？」
『っ……違う。私だけ同じ仕事が少ないから』
「あーね。最近一人の仕事多かったからな」
『…ありがたいことだけど、私も一緒にＹｏｕＴｕｂｅとかやりたかった』
子供っぽいと言われるようなことを言えるようになったのは、このまえのトラブルがあってからだ。
思っていることを口にしてもいいのだと、しげに支えてもらって辰哉と照が守ってくれたから。
「多分だけど、そろそろ一人の仕事も少なくなるよ。ふっかがそうさせてる」
『……うん』
「今度はラウの曲作ってやるんだろ？その時間位俺らが作ってやるよ」
ラウの初主演の映画が決まり、ラウ本人から北斗のようにラウの為の曲を作ってほしいと頼まれていた。
それがSnowManの為の曲にもなるとラウが私の背中を押してくれた。
「俺らに最高の曲を歌わせてくれるんだろ？」
『………約束だからね』
零れたように笑う佐久間に私はぎゅっと拳を握る。
迷子になりそうな心を佐久間はいつも簡単に捕まえて歩く道を教えてくれる。
この道なら大丈夫だって先に傷ついてでも指示してくれる私の光だった。
『佐久間は……ひだまりみたいな人だね』
「？」
一緒に休ませてくれるのがしげだとしたら、佐久間は強引にも足を動かしてくれる存在だ。
わかっていない様子で頭の上にはてなを浮かべる佐久間に私はわからなくてもいいと思う。
無意識化でできてしまうのが佐久間大介という光なのだから。
『みんなが輝ける歌作るから』
待ってて、といえば彼は太陽のような笑顔を見せてくれた。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年9月16日 14時
