新しい試み ページ5
目黒にドラマのオファーが掛った。
ラウールに次いで大きい仕事を持ってきた彼にメンバーが全員で祝福した。
私は同時に”消えた初恋”への出演が決まっていた。
「Aと一緒に出れるなら、少し安心した。」
『初のW主演だと緊張するからね……。道枝は昔少しだけ話したこともあるから。
何かあれば間に入るよ』
「頼りになるけど、ぎりぎりまでは俺自身で頑張る」
努力の男と言えばいいほど、自分にストイックになる目黒のストッパーとしてメンバーに送られたことは言わないでおくことにした。
メンバーと初の共演となって緊張はしているが、藤原に道枝が無理をしすぎないように見ていてほしいと珍しくメールが来たため、二人のことは良く見ていようと思ったのだ。
「ふっかさんとかに俺のこと頼まれたと思うけど、Aもすぐに無理するから、俺も見張ってるからね」
『……誰にいわれたの』
「佐久間君」
同い年だけど、歴は圧倒的に私の方が多くて、つい弟のように接してしまうけど、彼は彼で私のことを気にかけてくれていた。
佐久間に言われたとしてもこうやって言ってくれたのは、きっとデビュー前に一人で突っ走って倒れたことがあるから。
『相互監視だね』
「俺らよりメンバーがお節介だからね」
二人して小さく笑って、メンバーの温かさにそっと微笑んだ。
目黒にとってラウールが弟的存在であることはメンバーもファンにも周知された事実だけど、新しく彼にとって弟的存在の道枝が現れた。
二人は最初こそぎこちない挨拶から入って、なかなかなじめなかったが、康二という仲介役が現れてその壁は一瞬で吹き飛ばされた。
「あ！Aさん！」
『…ん？』
久しぶりということもあって、私に対してもぎこちなかった道枝だけど、撮影が進むにつれて少しずつ打ち解けてくれた。
声を掛けられて振り返れば彼は興奮した様に携帯を握りしめていた。
「あの！康ちゃんから聞いたんですけど、最近はグループ以外の作曲もしてるんですよね…？」
『……浮かんだ曲を提供してるだけだけど……何グループかには使っていただいてるよ』
「おこがましいお願いなんですけど……！＿＿＿＿＿！」
道枝にいわれたお願いに転機が訪れた。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年9月16日 14時
