桃空 ページ10
倒れてからというもの辰哉を中心に照や涼太の過保護が加速した。
ダンス練習の前のストレッチも佐久間と一緒に入念にさせられる。
「完全にA幼稚園児扱いみたい」
『……言わないで。何歳だと思ってんだか…』
「倒れるまで無理した自分が悪い。約束、忘れたとは言わせないぞ」
佐久間の真剣な目を鏡越しに見て頷く。
SnowManになった時から、東京のJrの中で浮いていた私の二人目のライバルは佐久間だ。
自分には無かったアクロバットをムキになって覚えたのは佐久間という一人のダンスセンスとアクロバット技術に憧れたからでもある。
智洋もすごかったが、彼の持つポテンシャルは智洋に類似したエンターテイナーとしてのセンスが輝いていた。
「Aのファン第一号は俺だからな。お前が勝手につぶれるなんて俺が許さない」
『……ん』
辰哉の後から必死にSnowManに誘ってくれた彼は不器用な優しさで手を引っ張てくれた。
ここに居ていいのだとなんども示してくれたから、今の私が居る。
智洋とはまた違うライバルのような存在に救われてきた。
『アクロバット、回数減らす』
「ん。そうしな。もし見た方がよければ俺とか、照とかいつでも手伝うから。」
自分の生活も考えずに追い込んでいた自覚はあるから、減らせる無理は減らそうと決めた。
ラウの成長期もあって、当面激しいアクロバットは減らす傾向にグループとして決まったから、自分も今回はやらないようにする。
照や佐久間が必要になれば見てくれると言うなら、それは強い安心を覚えさせてくれるのだ。
アニメに合わせて作ったStoresを誰よりも真摯に向き合ってくれて、踊りにもこだわりをみせて、その姿を見るたびにこの曲を作ってよかったと心から思える。
『………心配させるけど、それでも……やっぱりこの時間が好きだなぁ』
倒れて看病してくれたしげはあの頃とはまた違う心配の色をその表情に浮かべていた。
自分の立場が万人に受け入れてもらえないことはこの事務所に入った時から覚悟してきて、それでも認めてもらおうと必死にあがいてきたつもりだ。
それでも、心ない言葉はたくさんあって……本当はデビュー後に作詞も作曲もやめようか悩んでいた。
依頼をうけてとりあえず作ってみたが、生み出すまでに時間が倍以上かかったし、正直自信なんてなかった。
けれど、佐久間が声優に選ばれて、その後押しをさせてもらえると決まってから、この曲を作ったのは間違っていないと思えた。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
