雪の中に咲く一輪華 (ページ8)

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「今日は俺が看病するけど、泊るにしてもいい気がしないでしょ」

宮舘君がなんで俺を呼んだのかなんとなく察しがついた。
同時になんでわかんねんと突っ込みたくもなったけれど、彼女が弱っていても聞こえてしまうことを恐れて小さく頷いた。

「後で神山君とも相談するけど、花音の看病覚えておいて損はないし、重岡君の仕事が落ち着いてるなら一緒にくる？」

「わかってて聞くのはずるない？行く」

迷惑をかけてしまうと首を横に振るお嬢を無視して宮舘君はわかったと頷いた。

「滝沢君に次いでに許可出してもらうからふっかに一緒に伝えてもらう様に言ってくる。
少しだけだけど、二人で話しな」

「え……ええの？」

「…泣きそうな女の子そのまま叱れないでしょ」

話すのとかもしんどそうなAだけど、泣きそうな顔をしている彼女に宮舘君は小さく微笑んで阿部君も一緒に連れて部屋を二人きりにしてくれた。
俺は、扉が閉まる音を確認してから、ソファーの前に座って彼女の真っ赤な頬をそっと撫でる。

『っ……ご、めん……』

泣きそうなAの声に俺は頬を搔いてその言葉の続きを待つ。
宮舘君の言う様に、彼女は今回の失敗の理由もわかっている。

『…言えなかった……。こわ、かった』

「……何が怖かった？」

『…めいわく、かけたくなかったの』

コロナ中で、発熱と言ってしまえば仕事に支障が出てしまうと恐れていたのだ。
Aらしい理由だと思った。

『……だいに、言おうって……でも、怖くて』

俺のことを”だい”と呼ぶのは、本当に弱った時だと分かっているから、俺はもうこれ以上しゃべらなくていいと、彼女の熱いままの頬をそっと撫でた。

「…たくさん悩んでくれたやんな。しゃーなしやから、今日だけは許したる」

『……ん』

「今度はしっかりメンバーとか俺に言えるようにしよな」

強がりなのがAだと分かっているから、俺は頼っていいのだと何度でも繰り返し彼女に言うしかない。
安心からなのか、Aの頬に涙が流れる。

『ご、めん、なさい』

「ええよ。たくさん泣き」

メンバーの前でも、ファンの前でも泣けなくなったAが泣けるのは俺の前だと分かっている。
昔、一人で必死に戦っていた彼女にそう約束したから。
ぽろぽろと声も上げずに不器用な泣き方しかできなくなった彼女を愛おしく思う。

「たくさんがんばったやんな」

小さく頷いたAに俺はそっと笑った。