赤空 ページ7
シングルで作詞作曲をした曲がアニメで主題歌に選ばれたのは初めてで、たくさんの仕事が押し寄せていた。
照の件があっても、押し寄せる仕事が減るわけではなくて、言葉を選ばなければいけないことも増えてストレスは限界まで来ていたのだと思う。
「！音楽止めて！！」
ガッと自分の腕を掴んで腰に足を入れて支えてくれた涼太のおかげで床に体を打ち付けることはなかったが、身体に力は入らなくて、息も苦しかった。
泣きそうな顔をした照が見えたけど、声も出せなくて、涼太がゆっくりと床に寝かしてくれたのだけはなんとなくわかった。
「…熱、いつからあったの」
『っ……朝』
「……絶対に熱上がってるから、一回楽屋行くよ」
涼太が珍しく怒っていると分かった。
言わなかった自分が悪いと分かってるから、何とか頷く。
「ふっか、滝沢君に連絡して花音の家の鍵、スペアもらってきて。
阿部、WESTに連絡して、神山くんか、しげ……濱田くん来れないか聞いて」
「「了解」」
「照、医務室に行って解熱剤もらってきて、ついでに体温計ももらってきてくれると助かる。
翔太はスポドリ買ってきて。目黒、康二、ラウは今から俺の看病見てこうなった時の対処覚えようか」
新メンバーになってからは倒れたのは初めてだったな、と遠くなっていく意識の中で涼太の指示を聞きながら考えていた。
重岡ｓｉｄｅ
「…一番忙しいのは花音だってわかってたでしょ。なんで倒れる前に言わなかったの」
珍しい人の怒っている声に阿部君から連絡を受けて走ってきたけど、扉の前で手が止まった。
音を立てないようにしてそっと扉を開けてみると、ソファーに横になっているAと、目の前で仁王立ちになって叱っているのであろう宮舘君がいた。
『……穴、あけら、れない……』
「今の現状の方が困る。ＰＣＲで陰性だったからいいものの。コロナだったらどうするの」
『……ごめん、なさい……』
披露による発熱だと医務室の医師に診断を受けたらしい。
俺はトントンと扉をノックして顔を出す。
「…急にごめんね。見ての通りだよ」
「あーあ……最近はなかったんに…。A、悪いことしたってわかっとるんやねんな」
中に入れてもらえば阿部くんは申し訳なさそうに俺をAの寝るソファーまで入れてくれた。
俺を見上げた彼女は泣きそうな顔をしてから、小さく俺の問いに頷いた。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
