ソロ曲 迷い ページ44
アルバムを出すにあたって、作曲の依頼が多かった。
今回はそれぞれユニットを組んでの楽曲があったが、一人多くなってしまう状況で、私はソロ曲を出すことが決まった。
「演出でメンバー出すとかならできるから」
「Aのやりたいようにやったらいいよ」
メンバーに背中を押されて、必死に作詞作曲を進めていく中で、壁にぶち当たっていた。
何を伝えたいのか、自分が知ってほしい私がどんな姿なのか浮かばなかったのだ。
「ソロ曲で詰まるのは珍しいね」
『……メンバーに歌ってほしいとか、ファンに見てほしい姿が浮かんでからいつも作ってたから…わかんなくなってきた』
目黒に付き合ってもらって入ったブックカフェでため息を零す。
いろんな本に触れればなにか浮かぶかと思ったが、そういうわけでもなくて、謎のスランプに陥っていた。
「……Aは良くも悪くも俺らの為が第一だから」
『…お前たちとファンが一番に決まってるでしょ。宝物だもん』
「そういうところ。少しくらいさ、わがまま言っても俺らは否定しないし、ファンのみんなだってもうAのこと批判したりしないと思う」
恐れていることを見透かされているようで、私はそっぽ向いた。
目黒はそれに小さく笑った。
頭ではもう理解をしていても……染みついた恐怖と思考はなかなか消えてくれないのだ。
「…あとはAがどれだけ、自分を許してあげられるかじゃない」
『………馬鹿の癖に、人のこと良く見てるから嫌い』
「はは、馬鹿は余計だ」
阿部のことを支えてくれたのも、ラウや康二のことを見捨てないでくれたのも……こいつの人柄だってわかるから…。
こんなに面倒な女のことも見捨てないで居てくれた目黒だからこうやって素の自分で向き合えたのだ。
私は頬杖をついてもう少し悩んで曲を作ろうとそっとため息を零した。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
