黄空 ページ5
昔から体はそこまで強い方ではなかった。
それでも、やっぱり男と同じポテンシャルは要求されていることくらい、自分が一番わかっていたから…。
『……照みたいにすぐ筋肉がつけばいいのに』
「はは…Aは人一倍筋肉が付きにくいからな」
私は薄っぺらい腹筋を触りながらため息を零した。
照にも言われるが、私の身長を考えたら体重は少ないし、筋肉量も少ないと言われても仕方がない。
「今はまだアクロバットに力入れられないし、Aの体系でもスラってしてるんだから気にしなくていいじゃん」
『……平均は必要でしょ』
「まあ…。あ、神ちゃんにいわれた？」
ぶす……とそっぽ向いた。
照が小さく笑っているのが分かる。
「神ちゃんとまた喧嘩したんだろ？」
『……うん』
「最近あんまごはん食べたくならなかったんだよな？」
作詞作曲に集中すると、私生活が壊滅的に崩壊するのを、照は知っている。
私の体調管理を任されているのは、意外にも照の方が多い。
涼太も任されているが、彼は主に食生活の管理の方がメインだったりして、体系の変化に気が付くのは照なのだ。
「あいつにも言ってなかったんだっけ」
『……今は特に忙しいから言えるわけないじゃん』
「うーん……その方が拗ねると思うんだけど」
彼の親友と言われる重岡大毅は昔からの中があって……私が唯一泣くことができる人でもある。
関西と関東で活動拠点は離れても、彼はあの日からもずっと私なんかの面倒を見てくれる。
「しげはAに頼られて嫌がるようなやつじゃないよ」
『……そうかもしれないけど……甘えでしょ』
「倒れられる方が俺も、俺らも、あいつも嫌だよ」
前科があるが故に文句が言えなかった。
WESTとは今でも智洋を中心にしげ、崇裕と彼らのデビュー当時のような溝はなくなったが、やっぱり言いにくいことはあるのだ。
口を噤めば照はそっと微笑んでそれ以上は言わなかった。
「神ちゃんがきっと言ってるだろうから、俺からはあまり強くは言わない。
でも、リーダーとして心配はするから」
『……ん』
「無理はしないこと」
照の不器用な優しさには文句が言えなかった。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
