雪の中に咲く一輪華 (ページ36)

今日:31 hit、昨日:3 hit、合計:47,959 hit

様々な形ページ36

ドラマの顔合わせで監督にしげとの交流を図るようにお願いされた。
昔からの付き合いだとしても、初めての夫婦役で今までとは違う距離感を知ってほしいとお願いを受け、亡き母親役として、はるくん役をするお子さんと三人で過ごす時間をもらった。

『はるくんは私のこと知ってくれてたんだね』

「お母さんが好きって言ってた！」

『ふふ、嬉しいなぁ』

しげが二人でキャッチボールしたりして距離を縮めて、私は作ってきたお弁当をはるくんに食べてもらう様にして少しずつ距離を縮めていた。
SnowManは知らないが、テレビで私を見たと言ってくれて、お母さんがファンだそうだ。
しげも話には入ってこないがはるくんを優しい目で見守ってくれていた。

役に入りきるために三人のときにははるくんにパパ、ママと呼んでもらうことになった。

「ママー！見てて！」

『はーい。見てるよ』

本当の親子のような時間に私は少しだけ、親というものを教えてもらっていた。
過ごした時間はきっと、他の家庭と比べてしまったら限りなく少なかったのかもしれない。
それでも……私の両親はきっと、こんな私なんかのことを愛してくれていたのだろう。

「ハル下手くそやな！ほれ、教えたるわ」

「パパのところまで投げられるもん！」

本当の親子ではない…それでも、きっとこんな家庭があったのだろうとしげとはるくんを通して知ることができた。
時々手を振ってくれる二人に私は心から笑えた。

『……みんなのお母様の結婚式の写真とか、見せてもらえたりしないかな』

「おふくろの！？」

今まで家族というものは小さい時に自分を守ってなくしたから。
もう二度と戻ってくるものじゃないと諦めたから知ることを拒んできた。

なくしたものに縋ってしまう自分を恐れて、知ることを拒んできた。

「珍しいね。Aから家族の写真を見たいって」

『…私が知ってるのは極稀な家族の形で…たくさんの人達の形を知りたかったから』

それこそわかることだと佐久間も頷いていた。
阿部の家の写真や涼太たちの家族写真を眺めて、本当に私の家は写真を残してあるのが少なかったんだと実感する。

「お袋がよかったら今度うちにくればたくさんあるから見せてくれるってよ」

『…そこまでしなくても…』

中でも乗り気だったのは翔太だった。
翔太のお母様と妹ちゃんにはたくさんお世話になっていた。

「会いたいらしいから行くぞ」

はい、と答えて私はまた写真に目を落とした。