映画 ページ30
ストーンズに提供した”僕は僕じゃないんだ”は思っていた以上に大好評を収めたらしくて、私もほっと肩の荷が落ちた。
なんでスノの私がストに楽曲提供するんだなどの声もあったが、映画製作者の方で楽曲提供を依頼したのだと公表してからはそういった声も減った。
「…Aに変な声がいっちゃってごめん」
『北斗が謝ることじゃない。作る前からわかってて引き受けたんだから気にしないで』
強がりでもなく、こうなるだろうとはわかっていた。
ある程度覚悟はしていたから、平気だと言った。
北斗はそれでも眉間の皺を寄せていて、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
映画が完成して会見も終われば、それぞれのユニットメンバーに作品の評価をもらった。
「…北斗君ばかりずるいです…」
「ずるいって言われても……監督たちの勧めでもあったんだから」
「しかたなくAに歌貰ったって言うんですか!?」
「そんなわけないだろ!!」
北斗に珍しくしょうがないと受け入れていたはずのラウが嚙みついていた。
本当にしかたないからと何度も繰り返していたラウらしい行動だと辰哉たちもすきにさせていた。
『…だから、ラウが主演をするときにラウの為に曲を書くって約束したでしょ』
「!うん!!A!絶対、絶対だよ!!」
『はいはい。わかった、わかった』
北斗がどうにかしろと目で訴えてきたから、説得のために使っていた約束を引き合いに出せば犬の様に瞬時に振り向いてむぎゅっと抱きしめられた。
キャンキャンと耳元で騒ぐラウの言葉に抱きつぶされるぬいぐるみの気持ちがよく分かった。
関西Jr時代、望にされ続けたことを今になって同じことをされるとは思いもしなかったが、好意を向けられてどうしたらいいのかわからなくなるよりはマシだろうと大人しくされるがまま振り回されることにした。
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作者名:重岡優月 | 作成日時:2022年8月4日 18時