僕が僕じゃないみたいだ ページ27
ストーンズに啖呵を切ってから数日後、北斗から楽屋に来てほしいとメッセ―ジが入った。
ＹｏｕＴｕｂｅの撮影後に気が付いて、今から向かうと返事をする。
「ストーンズのとこ、ひとりで行くって珍しいね」
『勝手に携帯見ないで』
「ごめんごめん、たまたま見えちゃって」
一緒に撮影だった阿部ちゃんに見られて、支度しているとそう言われた。
確かに、デビュー前も彼らのところに行くのであれば必ず他のメンバーを連れてだったなと、思い返す。
彼らが私を避けていたのは当然だが、私も彼らを避けていたのだと少し反省した。
楽屋に入ってすぐにこの前座らせてもらった椅子に誘導された。
目の前には自分よりも大きい六人が並んぶという異色の状況に私は苦笑いを浮かべていただろう。
「まず、今まで変に避けるっていう態度を取ってたことを謝りたくて」
『……お互い様でしょ。私もごめん』
「うん……俺らもごめん」
慎太郎を筆頭に全員に頭を下げられた。
私も頭を下げて、お互い様という形に落ち着けた。
「この前のものも含めて、俺が言ったのは雪村さんへの侮辱だった。」
『……』
「雪村さんに作ってほしい。俺らのシングル曲を」
ジェシー君のまっすぐな瞳は力強いものがあって、リーダーではないとしても彼が軸なのだとなんとなく予想させた。
私は返された過去のファイルとは別に新しいものを彼らの前に置いた。
「これは……」
『この数日で私が作ってみた試作段階の曲たち。』
「えっ……！！」
『ジャズじゃないけど、それっぽいものを取り込んで京本君と北斗の声を最大限生かせると思ったのが一番上。
ジェシー君や慎太郎みたいな力強い曲を生かせるのは二曲目。
三曲目は正直進めない。よく考えたら今回の映画には沿わない曲調になったから』
彼らが歌うならどんなものがいいのか私なりに考えていたのだ。
めくりながら軽く説明するが彼らからの反応が無く顔を上げると、彼らはそろいもそろって驚いた顔をしていた。
『…仕事でもらったんだから、これくらいはするよ。
情報収集して、それっぽいものを作っただけ』
「……いつもこんなに作るの？」
『SnowManの時はあまりしない。作り慣れてきたし、歌ってほしい曲を作ってるから……何個も作ってデモにしてから判断させてる』
初めての相手はそれをしてから一つも見つからないってなると時間が足りなくなるから、本当に軽いデータを作って提示してからデモにしていく方法が多い。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
