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「重岡君は……？」
『……情けないけど、アクロバットができなくて、多分泣きそうになってた時に初めて話したんだと思う……。
私が、泣いたことも笑わないでただ、一緒に居てくれたのが、しげかな』
確かそれがしげと初めて話したときの記憶だ。
智洋と仲がいいことは後から知った。
「……雪村さん演技以外で泣くの」
『私のことなんだと思ってるの。泣くよ……人よりは多分強がりだけど』
「あ、強がりは認めるんだ。」
『嫌って程、負けず嫌いだからね』
両親の影響で物心ついた頃には子役として演技はしてきた。
だからJr時代から多くの作品に出演させて頂いていて、まあ……完璧でいないとという変な考えが染みついていた。
それを壊してくれたのは、他でもないWESTのみんなだ。
『……しげの前では、ただの女の子で居ても文句言われないから……』
「！！」
『……辰哉たちも同じだってわかってるんだけどね……それでも、泣いてもいいよって初めて言ってくれたのはしげだから……』
私がただの”雪村A”で居られるのは彼の前位だ。
北斗はそっかと少しだけ考えてから、立ち上がった。
「…俺も、別に雪村さんが泣いてもなにも言わない。」
『……絶対に泣かないから。』
「はは、お互い強がりばっかだ」
『北斗が言わないのが悪い。言ってくれない相手に言えるわけないでしょ』
北斗との間にあった壁が何だったのか今わかった。
私たちはきっとお互いが似ている部分が多くて、同族嫌悪みたいなものを少なからず抱えていたんだろう。
素で話してようやく分かった。
壁は壊せるとは思わないが、それでもお互いが似ているということを理解したら距離は縮まった気がした。
濱田ｓｉｄｅ
ストーンズの北斗からメールが来たと思ったら、しげ宛に伝えてほしいと珍しい言葉が並んでいた。
「しげ、北斗から」
「え？俺に？」
驚いていたしげに画面を見せると顔を真っ赤にしていた。
「雪村さんって本当に重岡君のことが好きなんですね。
唯一普通でいられるところって聞きました。
重岡君も素直になったらどうですか」
短い文章だが、あのAがあまり交流のない相手に本音を話すのは珍しい。
多分、北斗と自分が似てるって気が付いたから零したんだろうなと思ったが、二人ともそっぽ向いてそんなことないと言いそうだとそっと伝えた報告だけしておいた。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
