雪の中に咲く一輪華 (ページ3)

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紫空ページ3

｛Aは強い女の子になってね｝

『……強い女の子…？』

｛Aならなれるわ｝

ふわふわとした感覚にずっとそこに居たいと思った。
けれど、それは現実には許されるわけなくて、離れたくないその人が誰なのかなんとなくわかって心がずきずきと悲鳴を上げていた。

「A！！」

『……うるさいよ、辰哉…。聞こえてる』

もう薄れてしまったあの人の顔はぼやけていて見ることができないまま、よく知っている男の声に目を覚ます。
誰かが掛けてくれたのであろうブランケットを取られて、目元に置いていた腕を降ろす。

「…うなされてたけど、大丈夫？」

『……嫌味なほど、幸せな夢だったよ』

うちのメンバーの中でもメンバーのこととなれば人一倍心配性な最年長に私は自嘲する。
身体を起こして、今は仕事の合間の休憩時間で、いつのまにか楽屋で寝ていたと思い出す。

「最近隈ひどいけど、そんなに仕事詰めてたっけ」

『…そんなことないよ。セカンドのシングルで作詞作曲任せてもらってるから、そっちにいろいろ詰まってるだけ』

「珍しいな。Aがそっちで詰まるの」

言葉を間違えたと思った。
心配そうな顔をする辰哉に情けなく微笑む。

「Aが言いたくないなら聞かないけど……。パンクする前に相談位はしろよ。」

『わかってる。ごめんね』

弱音も、相談もできるような性格じゃないことは辰哉がグループの中だったら一番よく知ってくれている。
SnowManになるときも、彼はこんな私に真っすぐぶつかってくれたから。

「てことで、お前ができるなら俺は止めないから。
佐久間と撮影な。A待ちだよ」

『先にそれを言ってよ』

「へいへい。ほらメイク治してもらうでしょ、待ってもらってるから行っておいで」

よく知ってくれていると苦笑いを零して、楽屋を出る。
扉を閉めると置きに後ろを振り返れば彼は困ったようにそっと微笑んだ。

あぁ……母さんの夢を見たってばれてた。