黒空 ページ14
目黒ｓｉｄｅ
Aのことを呼び捨てにするまではかなり時間がかかったと思う。
やっぱり身近に唯一いる女の人っていう印象はなかなか消えなかったし、年は同じでも、彼女は俺より断然先輩でなかなか声を掛ける機会も同じグループになるまでは特になかった。
だから俺にとっては、AもSnowManみんなと同じで遠い存在だった。
『目黒、ここなんだけど、音ずれてる。
多分癖になってるから早めに直した方がいい』
「まじ？もう一回デモ聞かして」
『わかった。用意してくる』
作詞作曲を関西Jr時代からやっていたAの耳は俺らじゃ拾えないような音も拾っていて、振り付けの中でも全員の音ズレやわかりにくをデモを使ったりして教えてくれる。
特にAが作った曲だったらなおさらだった。
ずれているところの動画を見てから、音を聞くと確かにずれていることが分かった。
デモの中でも拾うべき音がどこなのかわかるようにベースの音や、ギターの音、ドラムの音のバランスを調節して聞かせてくれて、音楽に詳しいわけではない俺でもわかりやすくて助かった。
「次、注意してやってみる」
『うん。ここ以外は特に気になるようなところなかったから。』
「さんきゅ。あとはラウだけ？」
『うん。でもラウは多分自分でもわかってるからあまりいうつもりないかな』
休憩だって言われているにも関わらず、鏡の前で細かい振りの部分を何度も繰り返しているラウにAは苦笑いを浮かべていた。
ラウが自分の相棒としてシンメを取るのが難しいことだと分かっているからこその表情だ。
「……無理は止めて良いと思うけど、あいつなりにお前と向き合ってる途中だから。」
『わかってる』
過去Aが組んだことのあるのはSnowManを除けば、濱田くんと組んでいたBOYSのただ一つだけだった。
それ故に、彼女のシンメとして張れるのは濱田君だけだと言う声が彼女のファンからもあって、ラウはそれに一時期本当に苦しんだし、Aもどうしてやったらいいのかわからないと一人でセンターを張る覚悟もしていた。
独りぼっちの恐怖を二人はわかっているから、濱田君と重岡君の協力もあって、二人でセンターをやっていくと決められた。
「Aはもう調整済み？」
『終わってる。照に協力してもらった』
「さすが。じゃ、あいつのことお願いね」
自分に対しても、メンバーに対してもストイックなAだから絶対の信頼があった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
