スタートライン ページ1
始まりは今思えば、驚きばかりの連続だった。
「Youは音楽が好きかい？」
あの人と出会ったときから、きっと私の世界は色付きはじめた。
ジャニーさんの質問にYeｓと答えて、ダンスも好き、音楽も好き、演技も好きだと答えた。
「Youの世界は狭すぎるよ。僕と一緒においで。もっといろんな世界を見に行こう！！」
何もかもを失った５歳の夏から……真っ暗だった世界。
作業のように、言われるがままに流されていた私を救ってくれたのは、温かい陽だまりのようなおじいちゃんだった。
おばあちゃんに驚かれながら、私はあの人の手を取りたくて、苦しくて、辛い世界でも、ジャニーさんの言う新しい世界を知りたくて私はジャニーズに入った。
男の子ばかりで、女の子は自分を除いて誰もいなかった。
一人からのスタートで、なれない歌って踊るという技術は全く持っていなかった。
誰も応援してもらえない。
叩かれ続ける毎日。
それでも……演技だけは私を裏切らなかった。
ジュニア時代から主演を張らせてもらえたのは幸運でもあり、不幸でもあった。
「……Aちゃんが辛い時、誰が気づいてくれるんですか」
誰にも気づかれなかったあの日々を……一人だった世界をぶち壊してくれた。
「Aちゃんの方が先輩やけど、俺の方が年上やから……。
俺の前で位、ただの花音ちゃんで居ってもええんやないの」
強がりで、泣くことも拒絶してきた私を包み込んでくれた太陽のような人。
彼が居たから、私は人で居られた。
しげが居たから……私は最高のメンバーと、相棒に出会えた。
SnowManのデビュー後初のライブは無観客でのモノになった。
スタッフやメンバーにもやるせなさはあって、それをみんなごまかしながら初めてのライブに挑んだ。
無観客のデビューコンサートだったけど、ファンと笑い合えない状況だけど…
…それでも私はこのライブができたことが幸せだと思った。
ジャニーさんが最後に残してくれた私の宝物はこんなにもすごいんだと多くの人に画面越しでも自慢できたのだから。
あの人を……ずっと支えてくれていた昔の仲間を呼べたのだから。
「…しげー！私、もう後悔なんてしてないよ！！」
たくさん迷子になって、たくさん傷ついたこの道を胸張って歩けるようになったんだ。
隣で泣きそうな顔をしたメンバーや観覧席にいるしげ、崇裕、智洋に私は全力で笑った。
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作者名：重岡優月 | 作成日時：2022年8月4日 18時
