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「……ずっと……死を、願ってました」
僕から視線を外し言った花子に言葉を失った
冗談でもなんでもないことは彼女の目が物語っている
ーーー死?
彼女はずっと死にたかったのか?
自分と共にいた時も?
グワリと言い様の無い苛立ちが胸の底から沸き上がる
いなくなるつもりなのか
…俺の前から
俺とのあの時間を全て捨てて
過去にして
「逃げるな」
まるで呪うかのように力強く言った俺を花子は一瞬視界に入れるが、直ぐに興味を失ったのか顔を車の外に向けた
しかし意識はこちらにあるようなのでじっと返事を待つ
花子は一度そっと目を閉じ再び開いた
「……逃げ、なんでしょうね…これは。すみません、五条さんはたくさんの人の命を救っているのに」
違う、そんなことを言わせたい訳じゃない
俺は
ぐっと目隠しの下に隠された眉を寄せた僕は、窓の外から視線を離さない花子の顎を掴み無理やりこちらを向かせた
首に痛みが走ったのか花子は「うっ」と小さく呻き声を上げる
「死に物狂いで生きろ。俺に黙って勝手に死ぬことは許さない」
「…五条さん?」
不思議そうに小首を傾げる花子
少し思案した後ニコリと口元だけの笑顔を僕に向けた
共に過ごしていた時に見せたはにかんだ笑顔ではなく、ただ口角だけを上げて造った笑顔を
「……すみません」
そのひと言が僕の胸に重くのしかかる
恐らく花子は僕の言った言葉の真意は全く理解していない
単純に死ぬことを否定した僕の言葉に謝罪を述べたのだ
…即ち、自分の意思は変わらないことを示した
共に過ごしていた時はそんな兆候なかった
じゃあ、なんだっていうんだ
僕が花子のことをここまで追い詰めたのか
僕は瑞季を幸せにしたかった
代わりに花子の幸せを奪いたかったわけじゃない
「……僕のせい?」
花子はふるふると首を振る
乏しくなった表情からも驚き焦っている事が分かった
「違うよ。ずっと決めてたことだから五条さんのせいだなんてこと絶対にない」
花子は顎を掴んでいた僕の手を優しい手つきで外し、「それに」と続けた
「五条さんがいてくれたから、今私はここにいます」
じっと僕と目を会わせる花子に偽りを言っている様子はない
「この前幸せだったと言ったことは嘘じゃありません。……偽りだったとしても、あなたと一緒にいられて本当に幸せだったんです」
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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時