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「アタシも暇じゃないんだけど」
人がごった返す駅前喫茶店内
向かいに鎮座する硝子が僕に向けて煩わしそうに言葉を発するのを「まあまあ」と軽い動作で宥めて数席先に意識を集中させた
気付かれない様にチラリと視線を向けた先には愛しい妻の姿
口に運んだ料理が美味しかったのだろうか、僅かに目元が緩まっている
…かわい
その愛らしさに釣られて僕の表情もだらしなくユルみ掛けたが、はたりと花子の目の前に座る男が目に入りどこぞのヤンキー宜しく狂暴な顔へと変貌した
サングラスだけでは補えなかったのか、通路を挟んだ席に座る二人組の女子高生は先程まで僕の事を二人してキャーキャー言いながら見てたというのに変貌した僕の顔にドン引きしている
「……なんか近くね?」
「普通に向かい合ってるだけでしょ。あれで近いっていつの時代生きてんのアンタ」
「あ!あんな笑って!」
「…あれ笑ってるの?」
笑ってるだろ!
口角上がってんじゃん!雰囲気ホワホワしてんじゃん!!
力説する僕に硝子は白けた目を向けた
数日前花子から『翔くん』とやらと喫茶店へ出掛けると聞いた僕は、その約束の日である今日
今朝はまるで今から任務に行ってきます的な呈を装い家を出て、一時間ばかり遅れて家を出てきた花子を追跡
なんという偶然か、珍しく買い出しに出ていた硝子の気配を察知しお高めの酒を献上することを約束し道連れにして今に至る
こんなお洒落な喫茶店で男一人で入店するとどうしても浮いてしまう
いくら僕でもバレてしまう可能性もあるため硝子が通りかかったのは運が良かった
やはり神はグッドルッキングガイのこの僕に微笑んでいると思わざるを得ない
……喫茶店か
そういえば花子の誕生日にも水族館の帰りに喫茶店に立ち寄ったことを思い出す
花子を一人喫茶店に置き去りにしてしまったあの日
「……はぁ」
「最近ため息多いな」
半笑いでこちらを見てくる硝子をブスッと見返す
「そりゃため息も出るでしょ。何が悲しくて奥さんが他の男とイチャイチャしてるの見ないといけないのさ」
不機嫌に言い返す僕に硝子はキョトンとする
しかし直ぐに先程と同様にニヤニヤと不愉快な笑みを浮かべた
「止めたら良かったじゃん」
「……分かってて言ってない?」
「まあ止めれないよね。何たって離婚届け無理矢理白紙に戻して情に漬け込んで囲ってるだけだもんねー、これ以上嫌われたくないよねー」
イラっ!
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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時