煉獄さんと結婚したい！

29 ページ29

▼



ガンっ！！



「はぁっ！！！」


敷かれた布団にうつ伏せで寝転んでいると、容赦なく障子を叩かれる音がしてガバリと身体を起こす

近寄ってくる気配は感じていたが、まさかいきなり障子が外れんばかりの勢いで突撃されるとは思わず、心臓が凄まじい速さを叩き出す



え！
何事？！！

この気配って炎柱様だよね！！

何か怒ってるっ！？



ヒィィイ！、と恐怖のあまり返事も出来ない






ガン！

ガンガンガン！！





やめてええぇぇぇっ


恐怖染みてるよ？！

怖い怖い怖い！




「…は、はい！なんで



「開けるぞ！！！」




遮られたーっ！！

というか駄目！今だけは駄目！



「駄目です！！！！」

「何故だ！！！」

「駄目ったら駄目です！！！！」

「何故だ！！！！！！」



大声でやり過ごそうと思ったら更に大声で遮られたあ！

そうですよね、
だってあなたの分野ですもんねっ

近所迷惑だわ！！


好き！！！

あ、傷口に塩…っ



失恋の傷口に容赦なく塩を塗り込まれる感覚に、ぐっ、と再び布団に崩れ落ちる

しかし、油断したのが運の尽き



「失礼する！！」


失礼すぎるわっ

これでも一応女子！



ピシャァ！と開いた障子から姿を現したのは、例のごとく炎柱様

しかしいつもの明快とした雰囲気はなく、笑みは携えているものの何処か複雑そうな色を灯していた


慌てて布団から起き上がり炎柱様へと向かう


「どうなさったんですか？何かありましたか？」


身長差のため見上げ尋ねるが、炎柱様は一度開いた口を再び閉じてしまった

本当にどうしたんだろうか


しかし少し待っていると、意を決したように口を開く


「……どうか、したのか」

「……」


ん？

私がどうかしたの？



ぐるぐると頭上を疑問符が飛び交う

突然部屋を出てしまったのは申し訳無かったが、そこまで血相を変えて追われる程の事では無いと思う



「突然退室して驚かせてしまいましたか？」

「…いや、驚きはしたが…」


どうやら違うらしい

では何が？


捻っても出てこない心当たりに首を傾げてみせた

その姿を見て炎柱様は一瞬言葉に詰まる



「……泣いていたのか？」


ゆっくりと腕を上げた炎柱様の手が私の目元を撫で、私は慌てて身を引いた


「あは、先程傷口をぶつけてしまって涙がでちゃったんですよー。恥ずかしいから誰にも言っちゃ駄目ですよ！」


めっ、と顔の前で人差し指を立てながら冗談交じりにするが、炎柱様の表情は真剣なまま

30→←28

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す