お兄ちゃんと妹 2 【白布賢二郎】

お兄ちゃんと仕事 ページ42

　
　
　
　
｢うげ…めっちゃ賢二郎の匂いする…｣






女子更衣室の空きロッカーに制服を置いて




体育館へ向かおうと体を動かせば意識しなくても香る




賢二郎の匂い




苦手な匂いじゃないしむしろ落ち着く匂いではあるけど




常に賢二郎が横にいるみたいで緊張してしまう




少女漫画みたいな気持ちをまさか




自分の兄で体験するとは思っていなかった




体育館に戻って1番に倉庫の扉を開けて中を覗くと




ボール出しを終えた佐倉さんが




ゼッケンを片付けている所だった






｢ねぇ、手伝うことある？｣




｢……ない。｣




｢そっか。……あ、ならスコア見せてくれる？｣




｢ス、スコア？｣




｢え、うん。記録書き終わってるからゼッケンやってるんでしょ？｣






私の中学にも1人だけマネがいたけれど




彼女はいつもボール出しが終わったら




選手のサーブやスパイクの記録を取ってくれていた




豊黒中だけしかやってない独特な練習法なのかな






｢……そんなもの、書いてないけど｣




｢書くように言われてもないの？｣




｢……言われてるけど…書き方知らないんだもの｣




｢え、聞きなよ。同じ1年とかなら聞けるでしょ？｣




｢練習中の選手に声をかけるなんて失礼じゃない。集中を切らしてしまうわ｣




｢いや、書かない方が後々迷惑だから｣






体育祭のリレーで使うであろうバトンの横に




【男子バレーボール部】と書かれたノートが




3冊置いてあるのを見つけた




パラパラとページをめくれば




そこに書かれているのは丁寧な字でまとめられた記録




書き方分からないならこれ見ればいいのに




思っていたよりも手際の悪い彼女に対して




五色くんや賢二郎に少し同情した




五色くんが必死に経験者のマネを必要とする理由も




分かった気がした
　
　
　
　
　

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