お兄ちゃんと妹 2 【白布賢二郎】

お兄ちゃんと錆びた歯車 ページ23

　
　
　

　
「誰かにそう言われたのか」




「え…？い、いえ…言われたわけでは」




「ならばそれは決めつけだ。少なくとも、俺の目にはいいトスとして映った。」






自信が籠っている目だ




少なくとも私には




この人が嘘をついているようにはとても見えなかった




いや、見えたくなかったのかもしれない




こんなにすごいエースにここまで言われるなんて




本当はそんなに悪いトスではなかったのだろうか




そんな甘い考えがよぎっても




この間目の当たりにしたDVDが




違うと否定してくる




私のトスは、勝ちには近づけない






「けど、私は負けました。自信満々に託した一本を完全に読まれて…止められました」




「？？ 絶対に勝ちが決まっている勝負などないだろう。」




「え…」






心の中で歯車が




微かに、でも確実に動いたのがわかった






「お前は、その試合以外負けたことがないのか？今まで勝ったことしかないのか？」




「そんなことは…」




「ならばその負けた試合も、今までに負けた試合と同じだろう。」




「そ、れは………」




「今までに負けた試合のラストの一本も自信を込めてあげたのだろう？しかし負けた。結果は変わらない。」




「………た、確かに？」




「なぜその一本にこだわる？引退がかかっていたからか？敗因がブロックにシャットアウトされたことだからか？今までに負けてきた状況と違うのは、負けた時のお前の意識だろう」




「……っ！」






＿＿＿ギィィィ、ガシャンッ！！！！




心の中で歯車の錆が




剥がれ落ちた音がした
　
　
　
　
　

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