第19話_______… ページ21
「ふー……」
フジに頼まれた、クソ面倒くさい仕事を終え、机に突っ伏す。
その執事はというと、「ご褒美をあげよう」とか言って、部屋を出ていってしまった。
なぜか、Aが、以前より城に来る回数が増えた気がする。
1週間に1回は来るようになった。
大きな暖炉が目立つ、食事をするためにあるこの部屋で頬杖をつく。
なんでこんなところで作業してるんだ。俺は。
真っ白なテーブルクロスの上に乗っている書類を片付ける。
「はー………寒っ。」
なんか、急に寒くなって来たな。背筋がブルッと震えた。もうすぐ冬だからか?
寒いっていうより、空気がヒンヤリ冷たくなった。
なんでだ、と考えていると、食堂の入り口の扉が、
重たそうにゆっくりと開いた。
「お、フジ!遅いぞ!ご褒美ってなん、だ………よ……………」
扉の方を振り向くと、持っていた30枚くらいの書類を、床に落とした。
体が固まり、背筋に一滴の汗が流れ落ちる。
いっそう重く、冷たくなった空気の食堂が、静まり返った。
その沈黙を破ったのは、あの安心できるニッコリとした笑顔の、扉を開けた主。
「キヨ、久しぶり!」
ソイツが笑顔になったのと同時に、
いつのまにか扉の前にいた紅茶を持ったフジも、立ち尽くした。
「………ヒラ………………………」
「んー?あぁ!!執事!!久しぶり!!何ヵ月ぶりだろー。」
ピョンピョン跳び跳ねて、フジの腕を掴んで笑う。
その子供のように、太陽みたいに笑う元気なヒラを見て、やはり安心してしまう。
「あ、う、うん。久しぶり。待ってて。ヒラのケーキも用意するから。」
「えっ!ケーキ!?」
わーい!と、疲れねぇのかとツッコミたくなるくらいに、さっきから跳び跳ねて喜ぶヒラ。
俺も、落ちた書類を片付けて、椅子に座る。しばらくして、
フジがお盆を持って、戻って来た。
「本当に久しぶりだな。国王。部屋で何してたんだよ?」
俺が聞くと、「んー?税金収めてるかとか、住民表の確認とかいろいろ」と、
大好きなケーキを頬張りながら笑った。
その光景を、紅茶をすすりながら眺めているフジが、口を開いた。
「…で、急にどうしたの?ヒラのことだから、俺らに何か用があるんでしょ?」
すると、あー…、と小さく笑ったヒラは、フォークを置いて、
ポケットから小さな箱を取り出した。
「…ねぇ。トランプ、しよ?」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1017人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すずみね - 更新がなくなってから影葉さんをずっと忘れられなくてまた来ちゃった...！また影葉さんの作品が見たいです！影葉さんがお元気でいられていることを願います。 (2020年4月21日 18時) (
レス) id: ca293ea056 (このIDを非表示/違反報告)
夜猫 - これ、前に読んでからすっごい読みたくなってて、でも作品の名前忘れて見れなかったから見れて嬉しい… (2018年4月8日 7時) (レス) id: c27b932811 (このIDを非表示/違反報告)
あんず - 逆に作者の窓になるまで「こーすけ」が「ヒラ」って気づかなかった( 。∀ ﾟ) (2018年4月6日 23時) (レス) id: b44d4e70a8 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月桜奈(プロフ) - 普通にこのぱーかーのこヒラじゃない？と気づいた笑 (2018年4月3日 0時) (レス) id: a7c0f853f1 (このIDを非表示/違反報告)
夜猫 - 兎の時でヒラだって気付いたw (2018年2月3日 3時) (レス) id: c27b932811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：影葉
| 作成日時：2015年10月23日 18時
