カノキドランチボックス【カノキド学パロ】 (ページ14)

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６月５ページ14

夕食後。

僕は、キドの部屋の前にいた。

先程から何度もノックを試みているが、なかなかその勇気が出ない。

姉ちゃんが少し話をしておいてくれたようだが、やはり昼間のように冷たくあしらわれることを考えると、流石の僕も怖くなってしまうのだ。

…しかし、いつまでもこんなことをしてはいられない。

｢…よし。｣

覚悟を決めた僕は、少し震える手を伸ばし、ドアを叩いた。

｢…はーい、誰だ？｣

中からキドの声でいらえがあった。

｢僕、カノ。…少し話がしたいんだけど、入っていい？｣

そう伝えると、ドア越しでもキドが体を硬くする気配が伝わってきた。

ああ、この様子だとダメかな。

そんなことを考えてしまう。

だが…

｢…分かった。入れ。｣

返ってきた台詞は、意外なものだった。

***

｢で、話ってなんだ？｣

先程と比べると棘の取れた、しかしまだ刺々しい口調でキドが問いかける。

｢ああ、うん、その…なんて言うか、えっと…体育祭の日のことなんだけど…。｣

なんと切り出していいか分からず最初が少しもたついたが、なんとか話を始めることができた。

｢ほら、あの日はさ、桃ちゃんが来てたじゃない？その事についてなんだけど…

えっと、あの時僕と話してたのは桃ちゃんが挨拶に来てくれてただけであって…

キドが想像してるのとは違うっていうか…

つまり、僕は彼女をそういう対象として見てないから…

とにかく、誤解させるようなことをしちゃってごめん。

嘘臭いかもしれないけど、信じてくれる？｣

着地点を見失いかけていた話を、自虐を込めた最後の一言でまとめ、キドの方を真っ直ぐに見つめる。

キドは何やら考え込んでいたが、｢うん｣と頷くと、僕の目を真っ直ぐに見つめ返してきた。

｢その話、本心か？｣

僕が頷くと、キドは｢そうか｣と再び頷いて、口を開いた。

｢俺の方こそ、変に疑って、八つ当たりして…酷いこと言ってごめん。

…すまなかった。｣

そのまま頭を下げてきた。

｢そんな、やめてよ！わかったから、頭なんて下げないで！｣

僕がそう促すと、キドはゆっくりと顔を上げた。

その目には、涙がいっぱいにたまっている。

｢…ほんとに、ごめん…。｣

｢ちょっとちょっと、なんでキドが泣いてるの?…ほら、泣かない泣かない！｣

何故か泣き出してしまったキドの涙を拭って、頭をそっと撫でてやる。

｢とにかく、これで仲直りだから、ね？｣

するとキドは、小さかった頃のように、少しだけ笑ってくれた。

雨は、いつの間にか止んでいた。