タイムリミット ページ33
「報告済んだんで、次の話題行きやすね」
「いや待って!!まだ何も理解出来てないから待って!!」
「めんどくせぇな。何が分かんねぇんでィ」
「何もかもかな!!1泊2日!?どういうことよ!!温泉てどこのよ!!というか、なんでいきなり」
「思い出巡り。してただろィ、二人で。1回くらい俺に行先決めさせろィ」
「思い出……? ―――あ!」
確かに私達はそんなことをしていた。2人で思い出の場所を巡って、他愛ない話をして。
だったら、行くって言うその温泉はもしかして。
「もしかして、私の家族と総悟の家族とで行った―――?」
「正解でィ」
ニヤリと悪戯っぽく笑う彼。
なんで。こんな時期。旅館とるのも新幹線とるのも大変だっただろうに。なんで。
「本当に、こんなギリギリで予約とれたのが奇跡でィ。どうしてもお盆休みのうちに行きたかったから」
「なにそれ。サボりとか気にする方だっけ?」
「いや、盆のうちに引っ越すことになったんでィ」
――――――あぁ、
「だから、これが終わったらすぐに出発でィ。ったく、忙しいったらありゃしねぇ」
時が、止まった気がした。
そんな訳はない。そんな訳はないから、泊まってくれない時が、ついにリミットを告げてきたのだ。
最初から分かっていた。分かっていたんだよ。
分かってたけど。
溢れそうになる涙を堪えるために、しかめっ面をしていると「ブッサイクな顔」と呆れられた。
「ひどい……」
「つーか、もう1個言う事あったのに、お前のせいでもう時間無ェじゃねぇか、どうしてくれんでィ」
「え、よくわかんないけどごめん。なんの話?」
「……まァ良いか。実際行った方が早ェ。乗れ」
再びサドルに跨り、私の手を引く総悟。しょうがないので、よく分からないままだが後ろの荷台に乗る。
総悟がペダルを踏み込んで、自転車は進みだす。
夏の夕暮れの湿った生暖かい風が空気を撫でる。
空は紫色に染まりはじめていた。
終わりがあること分かっているよ。
終わりがあるから、空が鮮やかに見えることも、全部。
76人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mire(プロフ) - 桃香さん» コメントありがとうございます!私も書くのが楽しみです!!その前にもうワンクッションあるので、そちらも楽しんで頂ければありがたいです。 (2018年8月21日 0時) (レス) id: f57da4a873 (このIDを非表示/違反報告)
桃香(プロフ) - 温泉んんんんん?!2人で?!楽しみ! (2018年8月18日 16時) (レス) id: f6fc303306 (このIDを非表示/違反報告)
mire(プロフ) - みやさん» ありがとうございます! (2018年7月12日 17時) (レス) id: f57da4a873 (このIDを非表示/違反報告)
みや - めっちゃおもしろいです ! 続き楽しみにしてます!! (2018年7月10日 1時) (レス) id: b183abc241 (このIDを非表示/違反報告)
mire(プロフ) - 茉優さん» こちらこそコメントありがとうございます!こちらの作品でもよろしくお願いしますm(_ _)m (2018年6月14日 17時) (レス) id: f57da4a873 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2018年6月13日 17時