今日は一際、輝く日【赤葦京治】 (ページ9)

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でページ9

「えっ、京治からだ…。」

液晶には京治、と彼の名前が表示されていた。 …でも今喧嘩してるし、とかそんな考えは捨てて私は電話に出た。

「もしも「やっと出た…。A、どこにいるの？」

私の声を遮って彼は問う。電話越しの彼の声はとても焦っていた。

「どこ……ここ、どこだろう。」

虚無になって途方もなく歩いていたら周りは見た事の無い風景だった。それほど遠くまで行っていないであろうが、土地勘のない私にはここがどこか分からなかった。

「とりあえず、現在地オンにしてマップで今の場所把握して。教えてくれたらそっち行くから。」

こういう時、スマホで良かったと心底思う。私は一旦耳からスマホを離し、言われた通りに自分の場所を探した。

「…鴨川の方っぽい」

「なんでそんなとこまで。」

「…ぼーっとしすぎた。」

とりあえず私の居場所がわかった京治は安心したように溜息を着いた。

「今からそっち向かうから動かないで待ってて。」

「えっ、来てくれるの？」

「当たり前だろ。」

なんで、あんな酷い本音を言ってしまったのに。私が寝てしまったがために誕生日の彼氏をお祝い出来なかったかもしれないのに、怒っていてもおかしくないはずなのに、なんでそんなに優しくしてくれるの。

止まっていた涙が再び出てくる。早く会いたい、大好きな彼に。

「泣かないでよ、すぐ行くから一回切るよ？」

精一杯の声でうん、と答える。私はすぐ近くにあった公園のベンチに腰をかけて彼を待った。

高校三年生にもなってこんなメソメソしてみっともないなぁ。こんな顔で京治に会えないよ。

暫くしてそういえば、と思い出してカバンからマフラーを取り出す。
あの日、京治のマフラーをつけたまま帰ってしまい、それからカバンにずっといれていたのだ。

「ちょっとシワになっちゃったかな…」

申し訳ないな、クリスマスプレゼントはマフラーにしようかな、そんなこと考えながら首元をマフラーで包む。暖かさがやってくると同時に京治の香りが鼻をくすぐった。

マフラーに顔を埋めて目を瞑る。鼻から空気を吸えば大好きな人の匂いを感じる。変態みたいじゃないか、自分。

でも、好きな人の匂いって、特別なんだよなぁ。

あーあ、あんなに悩んでたのに、怒ってたのに、全部どうでも良くなっちゃった。今はもう、京治が好きだってことしか考えられない。