め ページ8
「…さん、…さん!」
苗字を呼ばれている気がしてハッ、と顔を上げる。本を読んで待っていたらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
「どうしたんだこんな時間まで。とっくに最終下校時刻すぎてるぞ」
え、そんな時間?と思いスマホの電源をつける。無機質なデジタル表示の時計は20:50を示していた。
「えっ、えっ、やば。すみません!」
起こしてくれてありがとうございます!と見回りの先生にお礼を言い、急いで教室を出た。
さすがに寝すぎだ、自分。よく今まで起きなかったなってくらいだけど、思い返してみれば喧嘩のことが頭にあって最近よく眠れていなかった。そのツケが回ってきたのだ。
うちの学校の最終下校時刻は20:00。いくら練習試合でそれ以降の活動が許されていたとしても、とっくのとうにバレー部の活動は終わっているだろう。
万が一、とのことを考えてバレー部の体育館に立ち寄ってみたが、既に電気は消えていた。部室棟の方にも顔を出してみたが、電気は消えていたし人が居る気配もなかった。
待ってよう、って決心したのに寝ちゃうとか馬鹿みたい、私。
京治もいるわけないのに学校内探しちゃって。
結局お母さんに夜ご飯の有無の連絡もしていないから、きっと用意されていないだろう。惨めだ、とても惨めだ。
「なんでこう、上手くいかないんだろうなぁ…」
京治とこんな距離が離れてしまうことは初めてだった。自分が思っていたよりも心にきていたらしい。胸が苦しくて、涙が出てきた。歩く速度も遅くなる。今すぐその場でしゃがみこみたい。
朝よりも冷え込んでいる夜は、寂しさを増大させる。加えて辺りは暗い。気分は下がる一方だ。
右手に持つ紙袋の取っ手をぎゅっと握りしめて泣くな、泣くな、と耐える。
深呼吸をして脱力した時、スマホのバイブが鳴った。
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作者名:ねうさぎ | 作成日時:2019年12月11日 23時