11.少年の願望(２)＊ ページ11
僕は今日も終点駅のホームにいた。
楽しみの駅、悲しみの駅、廃材置き場。
感情を押し殺して廃材になった人間が来る所
ここは、もはや誰もいないし、
誰も来ることはないだろう。
そう思っていた。
この駅に自分以外の人間がいたと気付いたのはいつのことだったか、
もう覚えていないけれど
気付いた時には毎日、
そして今日も彼はそこにいた。
『なあ、』
頭の中に直接響くような声。
反対側のホームにいる、僕。
着ている服は違うけれど、
髪の色も違うけど、
それは確かに僕だった。
『ここ、さみーな。黒辻』
距離的に届かない声がまた頭の中に響く
黒辻。その通りだと思った。
自分には色がない。
ただこうやって
何も気にしないふりをしながら来ない電車を待っている。
「寒いかもしれない。
でも、僕は一体どうしたらいいんだ。明日にさえ希望を持てない今の僕に」
何も悩んでいないふりをして、
目を逸らして僕は言う。
何故か強気にならないといけない気がする。
目の前の色のついた僕が、眩しすぎて。
『……俺は、お前の理想だ。廃材みたいな毎日だろうが、捨てるのはまだ早いだろ。』
線路越しにも真っ直ぐに刺さる視線。
その視線に僕も目を合わせた。
突き刺さる鋭さに、強がりは消えていった。
「けど、僕は何もできない。君に追いつくことも、理想を諦めることも。」
「今のままじゃ駄目だと思う。だけど……」
もう、不安な気持ちは隠せなかった。
『良いよ。』
ふっ、と。
視線から刺さるような鋭さが無くなった
『お前が我儘で鈍感なのはわかってるさ。だから、明日でもその先でも、何時までも待ってやる。』
優しさのこもった視線が、冷え込んだ駅にとても暖かい。
お前は俺の主。
俺は明日、未来のお前なんだからな。
そう言って階段に消えた後ろ姿を見送る。
心なしかホームの温度が、少し上がった気がした。
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詠監(プロフ) - 素兎詐欺@永遠のカノキド廃人さん» 沢山のお気に入り、アンケートの回答、ありがとうございます。勉強との両立が難しくなってきたので更新は中々出来ませんが、よろしくお願いします。 (2015年4月28日 17時) (
レス) id: 848b6e3176 (このIDを非表示/違反報告)
素兎詐欺@永遠のカノキド廃人(プロフ) - 素敵なお話ですね。是非続きが読みたいです。更新、楽しみにしていますね(*^^*) (2015年4月28日 0時) (携帯から) (レス) id: 2556076766 (このIDを非表示/違反報告)
詠監(プロフ) - るるる♪さん» ありかとうございます！中々物語の進め方が上手くいかず苦戦してますが頑張りたいと思います！ (2015年3月13日 16時) (レス) id: d96647ad89 (このIDを非表示/違反報告)
るるる♪ - とても面白かったでーす！つづきがきになるっ＞＜更新待ってますっ！ (2015年3月13日 16時) (レス) id: f5e48699cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詠監 | 作成日時：2015年2月15日 14時
