ep.7 ページ7
エレベーターが開くたび、Aじゃないかと期待する。
ヨアもAも、まだ降りてこない。
ここにきてようやく、もし、Aとヨアが一緒に来たら、とか、すでに帰っていたら、とかそんなことが頭をよぎった。
会いたい一心で来てしまい、そんなことをすっかり忘れていたようだ。まったく、都合が良すぎる。
エレベーターが、また開く。
何度目かの、期待。
その期待は、今度こそ当たっていて、ヨアと一緒にAが来た。
「…っ、」
思わず、名前を呼びそうになるのを止めた。
ヨアがいる前で、Aのほうを呼んだら、大変なことどころじゃ済まなくなる。
冷静に、落ち着いて。
俺を呼ぶ、ヨアの声で、２人のもとへ駆け寄る。
その時、ばっちりと目があったけれど、瞬間でそらさらた。
Aなりに、ヨアにバレないようにしてくれているのだろうけれど、堂々と名前を呼ばないのも、目も合わせられないことを、どうしようもなく悔やむ。
"終わったら会いに行く"。
そう、さりげなく伝えるための方法も考えた。
さりげなく近づいて、Aにしか聞こえない声でこっそり。
伝える、はずだった。
Aのほうに一歩足を踏み出した瞬間、ヨアにするりと腕を絡まれた。
まずい、このままじゃ、伝えられない。
俺がそんな焦りを見せているのも知らずに、ヨアは隣でにこにこと笑っている。
今伝えなくちゃいけないのに。
速さを増す鼓動。
俺とヨアを見て、Aの顔がだんだん切なさを帯びてきている。
そんな顔させたくて来たんじゃない。
"またね"。
ヨアがついにそういった。
そのまま腕を引っ張られて、ヨアと会社を出ることになってしまった。
Aが、腕を引っ張って、引き止めてくれるんじゃないか。
そんなどうしようもない期待が膨らんだが、それはすぐに弾けて。
Aが、ヨアを前にそんなことできるはずないのに。どうして、こうも期待してしまうのだろう。
ばいばい、と手を振った、Aの顔が今にも泣きそうだったのを見た。
それを見て、伝えられなかった後悔と会いたさがぐんと増して。
俺は、ヨアに着信がきたとき、こっそりと愛しい彼女に電話をかける。
たった２コールが、こんなにも長く感じたのは、初めてだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 801人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちなり 。(プロフ) - ゆなさん» コメントありがとうございます◎そうなんですよね、、私も自分でベクメインにしたくせにチャニョル落ちも惜しくなってきてます、、！今後の展開にも迷ってます、、 (2018年9月30日 14時) (
レス) id: 88d1407a14 (このIDを非表示/違反報告)
ちなり 。(プロフ) - かのんさん» そんなそんな(;_;)ありがとうございます、！もうそれだけで頑張れます！ありがとうございます(;_;)(;_;) (2018年9月30日 14時) (レス) id: 88d1407a14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - お疲れ様です!!ベクペンだけど、チャニョルと幸せになってほしいな〜 (2018年9月30日 13時) (レス) id: 2f6c46c71c (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - ちなり 。さん» いえいえ！お忙しいのに更新してらっしゃってすごいと思うので気になさらないでください！更新を楽しみにしています！ (2018年9月30日 8時) (レス) id: 7904d62c28 (このIDを非表示/違反報告)
ちなり 。(プロフ) - かのんさん» わああ 嬉しすぎますありがとうございます(;_;)そしてたくさん待たせてしまって本当に申し訳ないです、なのにずっと読んでくださりありがとうございます(;_;)(;_;)更新ぽんぽんできるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします、！ (2018年9月30日 0時) (レス) id: 88d1407a14 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちなり 。 | 作成日時：2016年12月11日 21時
