ep.17 ページ17
.
あまりにも自然だから、あまりにも唐突だから、聞き逃しそうだったけれど。
「えっ、あ、あのっ、イルミネーションってあのイルミネーション？」
「うん。あのきらきら光るやつ。てかあれ以外に何があんだよ」
言葉にならないまま、どうにか言葉を紡ぎ出すと、彼特有のからっとしか笑い方で返された。
「どこのやつ？」
1番近くて、私の会社の近くのだけど、そこはさすがに同僚とかにばれたらまずいしなぁ。でも、あそこのがいちばんきれい。いつか一緒に … って、想像だけでもさせてほしい。
「どこって … Aの会社の近くでいいんじゃない？」
「へ、」
彼から返ってきた言葉は、またも自然すぎた。
ほんとのこと言うと、少しは期待してたから。こんなにあっさり言ってもらえるなんて思わなくて、まぬけな声がこぼれた。
「あの道通るたび、Aと一緒に見たいって思ってたんだよなー」
ふわっと揺れるやわらかい前髪からのぞく笑顔があまりにも純粋だから、思わずきゅん、としたのは私だけの秘密。
同じこと思っててくれてたんだ。
恋人でもないのに。浮気相手なだけなのに。
ヨアより先に、私のこと考えてくれてたんだ、ってことでいいんだよね、ベッキョン。
「私も。ベッキョンと見れたらなあ、って思ってたよ」
普段は恥ずかしさに負けて、素直に言えないけれど、彼だけ限定で、今日限定で、素直に伝えてみれば、緩んでゆく彼の頬。
つられてなんだかこっちまで緩む頬。
ふふふ、って笑えば、あーもう！という声と共にやや強引に彼の腕の中におさめられた。
「… ごめんな、A」
心地よい沈黙を先に破ったのは、彼のほう。
ごめんの意味がわかってしまうのは、やっぱり切なくて苦しくて。
「俺さ、バレてもいいと思ってるよ、正直」
おはよう、って言うように。またの突然の言葉は自然すぎてまた聞き逃してそうになった。
「どうしたの、ベッキョン」
「そのまんまだよ」
そのまんまって何？
ベッキョンと出会ってから、彼の言葉をそのまま飲みこまないようにしてるのに。
考えちゃだめだよ、落ち着かなきゃ。
最低だよね、"ヨアと別れる"という言葉を期待してるなんて。
ごめんね、ヨア。
ごめんね、ベッキョン。
私、そんなできた人間じゃないから、嘘でもその言葉が欲しいって思っちゃうよ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 801人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちなり 。(プロフ) - ゆなさん» コメントありがとうございます◎そうなんですよね、、私も自分でベクメインにしたくせにチャニョル落ちも惜しくなってきてます、、！今後の展開にも迷ってます、、 (2018年9月30日 14時) (
レス) id: 88d1407a14 (このIDを非表示/違反報告)
ちなり 。(プロフ) - かのんさん» そんなそんな(;_;)ありがとうございます、！もうそれだけで頑張れます！ありがとうございます(;_;)(;_;) (2018年9月30日 14時) (レス) id: 88d1407a14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - お疲れ様です!!ベクペンだけど、チャニョルと幸せになってほしいな〜 (2018年9月30日 13時) (レス) id: 2f6c46c71c (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - ちなり 。さん» いえいえ！お忙しいのに更新してらっしゃってすごいと思うので気になさらないでください！更新を楽しみにしています！ (2018年9月30日 8時) (レス) id: 7904d62c28 (このIDを非表示/違反報告)
ちなり 。(プロフ) - かのんさん» わああ 嬉しすぎますありがとうございます(;_;)そしてたくさん待たせてしまって本当に申し訳ないです、なのにずっと読んでくださりありがとうございます(;_;)(;_;)更新ぽんぽんできるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします、！ (2018年9月30日 0時) (レス) id: 88d1407a14 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちなり 。 | 作成日時：2016年12月11日 21時
