奇術師の妹、家出中です！【H×H】 (ページ2)

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さよならページ2

私は生まれた時から、兄と一緒にいた。
兄に付いて回って、兄も笑顔でそれを受け入れてくれたように思う。
けれど私は、一度も外に出たことがなかった。
「外の世界には、怖い人や悪い人がいっぱいいるんだよ♡」
外に出たいと言うと、兄は必ずそう言った。
私は、兄の言葉を鵜呑みにして、外に出ないことにしていた。
けど、寂しくはなかった。
兄は時々、友達を連れてきてくれた。
イルミ、クロロ、マチ、シャル、他にもいっぱい。
外の話を、いっぱいしてくれた。
クルタ族、ハンター試験、ジャポン、オークション、etc etc。
けれど、心にはぽっかりと穴が開いていた。
どれだけ本を読んでも、知識を得ても、どこか、何か、足りない気がしていた。
だから、もう一度。
『お兄ちゃん、お外に出たい。』
お兄ちゃんは、にこりと笑った。
わかってる。また、ダメだって言うんでしょ。
「A、いいかい？外の世界には、悪い人や、怖い人がいっぱいいるんだ。」
『でも・・・クロロ達みたいな、いい人もいるでしょ？』
私が言うと、お兄ちゃんは目を丸くして、それから、私の頭を撫でた。
「そうとも言い切れない。僕は、クロロ達の全てを知っているわけじゃない♧」
お前の身に何かあったら、どうするの。
兄は私の目を見て、しっかりと言う。
『けど、知るだけじゃ何もできない。知ってるだけじゃ、私は何にもなれない・・・！』
「それでいいんだよ♡」
『ぇ・・・。』
何を言っているのか、わからなくなる。
お兄ちゃんは、私をどうしたいの。
「お前は、何も考えなくていい。Aのためなら、僕は何だってするよ、僕の言うことを聞いている間は、ね♧」
お兄ちゃんを、恐ろしく感じた。
私は、お兄ちゃんのお人形じゃないのよって。私は、それすらも言えやしない。
私にとって、お兄ちゃんは全てで、絶対なんだ。絶対を、どう破れようか。
『でも・・・！』
「でももだってもいらない。・・・僕が欲しいのは、イエスだけだ。わかるね？」
わかるよ、わかってるよ。でも・・・納得はできないよ。
私は、頷くしかできない。
兄には、逆らえない。お兄ちゃんがいなければ、私は、生きていけない。

なんて思ってる、わけがない。
お兄ちゃんがいなくても、私は生きていける。
私は、もう弱くない。
弱いままの、守られるだけの存在じゃない。
だから・・・。
『ごめんね、お兄ちゃん。』
お兄ちゃんのいないお昼。私は家を飛び出した。
探さないで下さい、と書き残して。

さよなら、今までの私。