9話 マグル ページ10
馬鹿なことをした。相手がどんな人間なのかを確認せずにここまで招き入れてしまった。
まさかこいつは”魔法を知らない”側の人間だったとは....
私は恐る恐る口を開いた。
『貴方.....魔法は使えるの？』
「使えねぇよ。使えたら便利だろうけど」
『....あんた...”マグル”なんだな』
私はすぐに杖を抜いてエースに向ける。それを見てエースはゆっくりと立ち上がり、顔をしかめた。
「....おい、何してんだよ」
『私たちの存在は”マグル”には決して知られてはいけないの』
「マグル？」
『魔法が使えない人間の事だよ...
お前ら”マグル”は恐ろしい生き物....私達の事を魔女だ、悪魔だって殺そうとする。』
あの時私が牢屋で過ごした悪夢のような記憶が勝手に頭の中で再生される。
私は勝手に出てくる涙を抑えようと下を向いた。エースは今どんな顔をしてるのか知らないけど...きっと私が魔女だと知って驚いてるんだろうな...
「俺は別にお前が悪魔だとか思ってねェよ」
意外な答えが帰ってきた。驚いてエースの顔を見上げると、相手は落ち着いていた表情をしている。
「何をされたか思い出せ」
「”マグル”なら化け物扱いされるぞ」
「今すぐ処分しろ」 「オブリビエイトしないと」
「この人は大丈夫」 「またああなるぞ」
頭の中でいろんな声が交わった。唱えなければいけない呪文がある筈なのに...
声が出なかった。
すると何故かエースの足跡が近づいてくるのが聞こえた。
殴られる...早く何か唱えないと....呪文....呪文....
完全にパニック状態の私の肩は小刻みに震えた。落ち着かないといけないのに、呼吸は荒くなる一方。苦しい、怖い...
『来ないで....』
それでも足跡は止まらない
『来ないで！！』
も私はオブリビエイトを唱えようと息を吸った瞬間、何か温かいものに包まれた。
気づけば、私はエースの腕の中にいた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
オブリビエイト(忘れよ)・・・対象の記憶を修正・消去する
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作者名：電球 | 作成日時：2018年1月24日 21時
