10話 唐突 ページ11
『へ...？』
あまりにも驚いて、腑抜けた声が出てしまった。私の肩にエースは顔を埋める形でがっしりと抱きしめられる。何を言おう、言葉が見つからずに、杖を持った手と空いている手は固まったままだった。
エースの方も何かを言う気配はない。
頬をくすぐる髪の毛の感触に我慢できずに、私は名前を振り絞った。
『エ、エース...ッ』
その瞬間、エースのビクッと肩を揺らして、今まで幽霊が取り付いていたかのように驚いた表情で手を離した。
「わ、悪ィ！！！なんか身体が勝手に...！」
エースはワタワタと手を降って居心地悪そうに首筋を触った。顔が真っ赤に鳴ってるところ相手も相当驚いたのだろう。正直自分も今何が起きたのかわかっていない。
お互い何も言わないまま、沈黙が続いた。いつの間にか私の背中にはにフラーがもぞもぞとよじ登っていた。何も知らない顔で私とエースを交互に見つめている。
「お、俺もういかねェと....」
エースは地面に置いていた鉄パイプを持って言った。私もずっと手に握っていた杖を腰にしまった。
『う、うん...出口まで送るよ』
私はすっかり相手が”マグル”なのを忘れていた。頭の中はぐるぐると回って、返事を返すのがやっとだった。
どこをどう戻ったのか、気づいたら最初入った時の小屋にいた。エースはハシゴを無言で上がって、出口を開けた
「じゃあ」
そう最後の挨拶をするとエースはさっさと姿を消してしまった。ここでやっと頭がまともに働くようになる。”マグルとハグした”と言う現状に私はへなへなと地面に屈み込んだ。
『何やってんだ私....』
「おい」
『ぎゃああ！！』
完全に一人だと思っていたので、頭上の声に驚いて悲鳴をあげてしまった。上を見ると、ひょっこり顔だけを覗き込んでこちらを見下ろすエースの顔があった。
「お前.....そういや家ってここなのか？」
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作者名：電球 | 作成日時：2018年1月24日 21時
