【刀剣乱舞】桜散れども【男主】 (ページ12)

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　水底から浮かび上がるように、あっけなく夢が終わった。

　もふもふとした何かが頬や首筋に触れるのを感じ、ゆるゆると目蓋を開く。どうやら布団に寝かされているらしく、息をすれば畳と天日干しされた布団の良い匂いが感じ取れた。

　まず視界を占領したのは明るい光の射す和室の天井――と、巨大な白虎の顔面。

「(……大きいな……)」

　ふわふわとした寝起きの思考のまま、こちらを覗き込む虎の金と水色の瞳をぼんやりと眺める。

　すぐに記憶にある長い付き合いの弟が連れていた、あの五匹の小虎と面影が重なった。
　ああきみはあの子らか、とは思えど流石にもう小虎とは呼べまい。

　もの言いたげに鼻先をこちらに近づけてくる “虎くん” に、仰向けのまま腕を伸ばした。
　姿が変われどもその人懐っこさは相変わらずのようで、鼻先を撫でればぐるぐると喉を鳴らし、甘えるように目を細める。

「(とりあえず――折れてはいない、のか)」

　伸ばした手に虎くんが額をぐりぐりと擦りつける、その感触は到底夢とは思えない。
　長い冬眠の明けのような心地で、一先ず己の生存を把握する。

　――けれど、やはりここは己の本丸ではないらしい。

　だってきっと、この虎くんは修行に行った(・・・・・・)五虎退のお供。
　己の本丸の五虎退は……いや五虎退に限らず皆、修行になど行っていない。

　ほっとするようなぞっとするような、わけのわからない感情と悪寒に襲われ思わず身を縮める。
　突然震え出した手のひらを、虎くんが慰めるように温かい舌でざり、と舐めた。

　ああごめんね、大丈夫――と言おうと、口を開く。