【刀剣乱舞】桜散れども【男主】 (ページ11)

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・ページ11

　目を見開く。黒く塗り潰されていた視界が不意に晴れた。

　……僕、いつの間に目を閉じていたんだろう。
　ここは戦場……じゃない、本丸……？だけどそれなら、みんなは？

　疑問符が浮かんでは泡のように消えて行く。どうしてか頭が割れるように痛い。

「――きょう、だい」

　やけに霞む視界に意識を戻せば、そこにはやはり弟の姿があった。
　優しい夢だ、と熱に浮かされたような頭のどこかで考える。

　――と同時に、腹の辺りを冷たい熱で貫かれた。

「……え？」

　目の前の弟―――乱が呆然とした顔でこちらを見ている。

　腹からじんわりと広がる熱と痛みに、覚束ない思考の中でああ斬られたのかと理解した。
　そのままふらふらと顔を上げる。傷も痛みも、取るに足らないことだった。

　金糸の髪に、空色の瞳。その内面同様、見目も華やかな自慢の弟。
　……けれどその姿は、己の知る姿とは少し違う。

「修行……に、いった、の？きょうだい」

　乾いた喉から何とか声を絞り出せば、乱がびくりと肩を揺らす。

　修行。そんな制度があるのだと、いつかこんのすけが言っていた。
　……修行道具が刀剣男士のために費やされたところを、僕はついぞ見れなかったけれど。

「っうん！ ……行ってきたよ、兄弟」

　乱は視線をまっすぐに合わせ、少し強張った、けれど綺麗な笑みを見せてくれた。

　全身から力が抜けて行くのがわかる。
　――弟は人に大切にされ、より強い刀としてその役目を全うしている。

　自然と口角が上がった。もう少し僕が元気なら、きっと誉桜を舞わせていただろうと思う。

　気付けば視界は傾き、両膝が地面に付いていた。
　体制を立て直す暇もなく、己の意識が再び沈んで行く。

　最後に乱と、他の何振りかの兄弟の慌てたような声を聞いた気がした。