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その手には布団が一組だけ抱えられ、少し困ったような顔をした赤葦が口を開く。
「...ひとつしかないです」
「え?あ、京治たち持ってったからか...え?」
沈黙が走る。
ふたりで、布団がひとつ、ということは──
「ん...やっぱちょっと狭いね」
「ですね...俺やっぱり床で寝ましょうか」
「それはだめだよ、身体大事にしなさい。それにしても今日はなんか、ハプニングというかトラブルが多いね...」
「...そうですね」
2人でぴったりとくっついて布団に入っている状態。
とはいっても高校生が2人、さらにはそのうち1人は現役のスポーツ男子なものだから、ところどころ布団からはみ出してしまっている。
「京治、布団ちゃんと入れてないじゃん」
「俺はいいんです、Aさんが入れていれば」
「だめだってば、ほら、私はいいから」
「埒が明かないな...よいしょ、」
「え、わっ...?!」
ぐっと引き寄せられ、赤葦の身体に包み込まれるような形で、先程よりも互いの身体が密着した状態に。
「け、いじ...っ」
「こうすれば2人とも入れるでしょう。それとも俺とくっつくの嫌ですか」
「嫌じゃないけど、なんか恥ずかしいっ」
「俺は恥ずかしがってる顔が見れてラッキーですけどね」
「〜〜〜っ!」
顔を真っ赤に染めて俯くA。
と、何かを思い出したようにまた顔をあげる。
そして発せられた言葉に、赤葦は目を丸くした。
「そういえば、結局なんで怒ってたの?」
「...はい?」
「あ、さっきの話じゃなくて、合宿中の話。ほら、なんかずっと不機嫌そうな感じ醸し出してなかった?」
「醸し出すって...わざとじゃないですけど。っていうか、理由言わせる気ですか」
「え、嫌なら別に...、ううん、やっぱ知りたい」
だって彼女だもん、と自分の身体のなかで柔らかく笑う彼女を、赤葦は愛おしそうに見つめた。
「...本当に、鈍感でいじらしい人ですね、Aさんは」
「へっ、それ褒めてる、んっ...?!」
ちゅっ、とリップ音を立てて短い口づけが落とされる。
「なっ...!またいきなり、っキスで誤魔化そうとしないで!」
「...ちっ」
「舌打ちしたね?!目そらさないでこっち──」
「...近いんですよ」
「え?」
「ッだから、最近 部員との距離が近いんです...特に、木兎さんとの」
「...京治、それって、」
「ストップ。言わなくていいので」
目を逸したまま、そう制する彼の耳はほんのり紅く染まっていて。
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作者(プロフ) - 花さん» ありがとうございます。忘れ雪シリーズ中心で書いていこうと思うので、更新遅くはなってしまいますが書かせていただきます!待っててくださると嬉しいです。 (2021年5月22日 13時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - リクエストよろしいでしょうか?→影山君で股ドンお願いします! (2021年5月22日 11時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 花さん» コメントありがとうございます。嬉しいです(;_;)励みになります! (2021年5月4日 10時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - とっても好みでした!体調を崩さないように気をつけてくださいね! (2021年5月3日 18時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - クマさん» お気遣いいただきありがとうございます...(;_;) のろのろになりますが、見守ってくださると嬉しいです。コメントありがとうございました(;_;) (2021年4月18日 15時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2021年1月15日 22時