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「...よし、できた!」
練習メニューの調整が終わり、ふと時計をみると、消灯時間をとうに過ぎてしまっていた。
「喉かわいた...」
自販機に行くくらいならいいだろう、と鍵と財布を持って部屋を出、ひとり廊下を歩き始める。
夜の自販機特有の青白い光が目立って見えてきたと同時に、前から近づいてくる人影が見えた。
「け...、赤葦?」
「...Aさん?なんで廊下に、」
「喉かわいちゃって、飲み物買いに来たの。赤葦はなんで?」
「...オートロックなこと忘れてて、締め出しくらいまして。それで、ッ、」
「...?」
突然言葉を止め、頭に手を当てるようにしてため息をついた。
ついさっきまで普通に話していたのに、不機嫌モードになってしまった彼に、少し戸惑うA。
「...その格好で、自販機まで行こうと?」
「え?あ、ショーパンの話?だって楽だし、長居するわけじゃな、っわ...?!」
話の途中で強く腕を引かれ、連行するかのように腕を掴んだまま歩き始めた。
「ちょっ...!赤葦、ねぇ!どうしたの、どこ行くの」
「...」
目も合わせず、何も答えずにズカズカと歩いていく。
そうして着いたのは先程までいたAの部屋の前だった。
なんでここに、と思っているうちに手から鍵が抜き取られ、開いた扉のなかに押し込まれる。
「ね、いい加減怒るよ、なんでずっと不機嫌なの」
「...まだわかりませんか」
「え...、あっ...?!」
両手首を掴まれ、壁に押し付けられる。
後ろは壁、前には赤葦。
そんな彼の顔は暗がりではっきりとは見えないが、怒っている中にどこか熱いものを含んでいるようだった。
「ちょっと、1回離して、」
「俺、危機感持ってくださいって言いましたよね」
「言ってたけど!とりあえず離し、ん...っ!?」
もう喋るな、とでも言うように唇で蓋をされる。
「んぅ...!んん〜っ!!っ、」
「ン...はァ、...そんな暴れなくても」
「い、いきなりキスなんかするからでしょ!なんで、なんか赤葦、今日おかしいよ...」
「...」
抑えられていた腕が解かれると、そのまま静かに抱きしめられる。
とくん、とくんと聴こえてくる胸の音。
近頃多忙だった2人には、ひどく懐かしい感覚の抱擁だった。
「赤葦、」
「なんで俺が不機嫌だったのか、本当に分からないんですね」
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作者(プロフ) - 花さん» ありがとうございます。忘れ雪シリーズ中心で書いていこうと思うので、更新遅くはなってしまいますが書かせていただきます!待っててくださると嬉しいです。 (2021年5月22日 13時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - リクエストよろしいでしょうか?→影山君で股ドンお願いします! (2021年5月22日 11時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 花さん» コメントありがとうございます。嬉しいです(;_;)励みになります! (2021年5月4日 10時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - とっても好みでした!体調を崩さないように気をつけてくださいね! (2021年5月3日 18時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - クマさん» お気遣いいただきありがとうございます...(;_;) のろのろになりますが、見守ってくださると嬉しいです。コメントありがとうございました(;_;) (2021年4月18日 15時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2021年1月15日 22時