* ページ29
*
「あ...さっきの、手払ったのも、それで?」
「あれは...、触ったら、止まんなくなりそう、だったから」
「!」
みるみるうちに赤く染っていく力の耳。
ひどく恥ずかしそうにして目を逸らす彼に、こちらまでなんだか恥ずかしくなってくる。
でもそれ以上に、目の前の彼が愛おしく思えてたまらない気分になる。
この感情を、なんと呼んだらいいんだろう。
好き、じゃ足りない。愛してる、でも足りない。
芥川龍之介みたいな文豪なら、いちばんふさわしい言葉を見つけられるんだろうか。
この、なんとも言えない気持ちを、溢れ出して止まらない想いを、どうやって伝えたらいいのだろう。
私は、そんな言葉なんて到底、持ち合わせていないから。
「...力、こっち向いて」
「なに...、ッ?!」
── ちゅっ
と、静かなリップ音が鳴って、唇が離れる。
触れるだけの、短いキス。
「...ハァ?!!なん、お前、何してッ...!!」
「なんか、力がすっごい愛おしく思えて、言葉にできなくて」
「ッ、」
「言葉でムリなら、行動で示すのがいちばんかな、っって、え?」
ぐるんっ、と視界が反転する。
目の前には力、その奥には天井がみえて、自分が机に押し倒されているのだと理解する。
「ち、ちか、んぅ...っ?!!」
名前を呼ぼうと口を開くと、唇で塞がれる。
さっきの、自分からした短いキスとはうってかわって長い、熱いキス。
少し息が苦しくて、力の胸板を叩いて気づいてもらおうと試みるも、両腕をガッチリと押さえつけられていて身動きが取れない。
「んんっ...!ん、はぁっ...!ちから、」
「ハァ...あー、ごめん...!」
なんとか息をしようと、顔を横にそらすと力も気づいたのか、そっと唇が離れていく。
彼の顔が見たくて上を見ると、目の前が何かで覆われて暗くなる。
伝わってくる熱で、それは力の手であるとわかった。
「ち、力、顔みたい、手どけて?」
「...俺は、見られたくない」
「えぇ...」
視界は暗いまま、腕を引かれて起き上がる。
目から手が離されてようやく顔が見れると思ったら、そのまま抱きしめられた。
「力、」
「まじで今、余裕なさすぎる顔してるから、絶対ダメ」
「まだ何も言ってないよ...ねぇ、力」
「...なに?」
彼の腕に包まれて、彼の胸に顔をうずめたまま、ぎゅうっ、と彼の身体を抱きしめる。
胸の音が、力を想う私の音が、少しでも届くように。
*
58人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
作者(プロフ) - 花さん» ありがとうございます。忘れ雪シリーズ中心で書いていこうと思うので、更新遅くはなってしまいますが書かせていただきます!待っててくださると嬉しいです。 (2021年5月22日 13時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - リクエストよろしいでしょうか?→影山君で股ドンお願いします! (2021年5月22日 11時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 花さん» コメントありがとうございます。嬉しいです(;_;)励みになります! (2021年5月4日 10時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - とっても好みでした!体調を崩さないように気をつけてくださいね! (2021年5月3日 18時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - クマさん» お気遣いいただきありがとうございます...(;_;) のろのろになりますが、見守ってくださると嬉しいです。コメントありがとうございました(;_;) (2021年4月18日 15時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:作者 | 作成日時:2021年1月15日 22時