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しばらく集中した後、ちらっ、とまた前に目を向ける。
少し前に真っ赤だった彼の耳はもう通常の色に戻っていて、こちらの視線に気づかないくらい真剣に本を読んでいる。
「...ねぇそれ、何読んでるの？」
「ん...芥川龍之介短編集。今は『芋粥』っての読んでる」
「へぇ...おもしろい？」
「うん、読みやすいしいいよ。人間の煩悩を描く...話」
「こ、こっちガン見して言わないで、なんか私が煩悩みたい」
「ははは、ごめんごめん...お、あとちょっとじゃん」
「うん、これで最後なんだけど...」
ここまで割とスラスラと解けていたのだが、最後の最後で少しよく分からない問題のご登場。
力もすぐには答えが出ないようで、2人で首をひねって問題用紙を覗き込む。
「これは...こうしたらこれで答えでるんじゃないか？」
「いや、それやったのよ、でもダメだった」
「げ、本当だ...ちょっと紙かして、もうちょい考えたい」
「お、力先生ファイト」
「ん...いや、これAの問題な」
眉間に皺を寄せて唸っている姿に、少しクスッとなってしまいそうだ。
なに笑ってんだ、と少しむくれる、そんな彼も愛おしく思える。
...こんなふうに、こんなに近くで彼の顔を見つめるのも、いつぶりだろうか。
本当は毎日こうしていたいくらいだが、時々の機会だからこそ愛おしさが倍増するのかな...
なんて思考を巡らせていると、こつん、と額を小突かれる。
「A〜、戻ってこーい。にやにやしながらぼーっとするな〜」
「なんっ...してないよ！にやにやなんか！」
「してたよ、にこにこーって。人が問題解いてる間なに考えてたんだよ」
「にやじゃなくてにこじゃん、...力のこと、考えてた」
「...俺のこと？」
「うん、やっぱりどんな力もカッコイイな〜って。
久々にこんなに近くで見れるから、幸せ噛みしめてた。へへっ」
「...。」
言ってから少し恥ずかしくなってきて、思わず下を向いてしまった。
また呆れられるかな、と考えていたが一向に返事は飛んでこず、2人きりの教室に沈黙が走る。
耐えきれずに前を向くと、シャーペンを握ったまま固まっている力。
「ち、力？おーい」
「ッおま...はァ〜〜！やっぱり何回目でも慣れないわ..お前のそういうところ...！」
「えっ...え、」
力は普段、私のことを名前で呼ぶ。
「お前」って言われたのは過去に1回だけ...旅行先ではぐれて、必死で探してくれた力に怒られた時くらいだ。
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作者(プロフ) - 花さん» ありがとうございます。忘れ雪シリーズ中心で書いていこうと思うので、更新遅くはなってしまいますが書かせていただきます！待っててくださると嬉しいです。 (2021年5月22日 13時) (
レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - リクエストよろしいでしょうか?→影山君で股ドンお願いします! (2021年5月22日 11時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 花さん» コメントありがとうございます。嬉しいです(;_;)励みになります！ (2021年5月4日 10時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
花 - とっても好みでした!体調を崩さないように気をつけてくださいね! (2021年5月3日 18時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - クマさん» お気遣いいただきありがとうございます...(;_;) のろのろになりますが、見守ってくださると嬉しいです。コメントありがとうございました(;_;) (2021年4月18日 15時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：作者 | 作成日時：2021年1月15日 22時
