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130.報せ ページ30

《A、織田作が倒れた。今すぐに来てくれないか。場所は――》


太宰から連絡があったのは幸いにも仕事が一段落ついたところだった。

――織田さんが倒れた。


そう聞いたとき、危うく携帯電話を落としそうになった。
その瞬間、心臓が止まって、息ができなくなった。其の後すぐに心臓が常時より速く動き出した。

厭だ、嘘、そんなこと……。

混乱する頭の片隅で、懐かしい記憶が蘇ったが、それを追いやってとにかく指定された場所に急ぐことにした。




*




「織田さん!!」


駆け込んだ部屋には既に太宰が居て、彼の座っている向こう側に白い寝台があった。
その上で目を閉じていたのは、私の最も大切な人だった。


「A、落ち着いて。容態は安定しているから」


こちらを振り返った太宰は、静かな声でそう云った。
普段の冗談めかした喋り方とは程遠い。


「ほら、深呼吸して」


いつの間にか荒くなっていた息遣いを指摘され、漸く苦しさを感じた。
指示に従い、大きく息を吸って吐いた。

ああ、少し落ち着いた。


「急に呼び出して悪いね」

「否、知らせてくれてよかった。それで、何があったんだ?」


太宰は一つ頷くと、私の瞳を見つめて云った。


「実はね、任務でとある洋館にある人物の救出に向かってもらったんだけど、爆薬が仕掛けられていてね」

「それで倒れたにしては外傷が少ない」

「そうだね。その爆発は何とか免れたんだが、その後で青い鞠に付着した毒に触れてしまってんだ」


その時、追いやった筈の記憶が蘇った。

そうだ、あの時、あの時だ。




――――独特の刻印のはいった拳銃


――――古い洋館


――――爆発


――――青い鞠



あの時見た映像と、太宰の云う今回の状況が酷似している。




「――安吾さん」





口を突いて出た言葉を、太宰は聞き逃さなかった。


「安吾がどうかしたの?」

「初めて、彼に会って、その手に触れた時、厭な予感がした。映像が流れた。刻印の入った拳銃、洋館、爆発、鞠……。あれも、予知だったのか?」

「矢張りあの時何かあったんだね」

「気づいていたのか?」

「否、半々だった。けど織田作があの後話してくれたんだ。Aの様子が明らかにおかしかったと。」


織田さんにはばれていたのか。

こんな、こんなことになるのなら、あの時話していればよかった。
話していれば、少なくとも織田さんは青い鞠を警戒したのではないだろうか?

ああ、自分が厭になる。

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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2019年1月3日 1時

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