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125.穏やかな時間 ページ25

昨日の経験を活かし、明るいうちに大通りを通って書類を届けに行こうと部屋を出た。
今日はポートマフィアの傘下、というよりは契約している店屋へ行くだけだったので、堂々とした恰好で堂々と歩いた方がよいだろうと思ったのもある。

と、入り口付近で織田さんを見つけた。


「おはようございます、お……作之助さん」

「ああ、おはよう」


微笑みと共に挨拶を返してくれたが、どことなくぎこちない。


「こんな早くに珍しいですね」


そういえば、織田さんは最下級構成員で、そもそも通常の仕事内容で此処を訪れるの自体は珍しい。


「そうだな。首領直々に話が合ったんだ」

「首領が直接?」


それなら相当重要な話だったんだろう。


「すみません、呼び止めて。お仕事頑張ってください」

「否、Aの面白い顔も見れたからな。大丈夫だ」

「なんですか、面白い顔って」


と云いつつ解っている。
織田さんの名前を呼ぶのにまだ慣れてなくて顔が赤くなっていたのだ。
そこは流してくれてもいいのに。


「冗談だ。Aも今から仕事か?」

「はい。最近は外の仕事もできて嬉しいです」

「そうか、よかったな。だが気をつけるんだぞ」

「解ってます。ご心配ありがとうございます」


昨日やらかしたことは黙っておこう。
織田さんに要らぬ心配をかける訳にはいかない。


「では、私は此方なので」

「俺は逆方向だ。気をつけてな」

「二回目ですよ。織田さんこそ、お気をつけて」

「ああ、またな」

「はい、また」


織田さんと別れて、街を歩く。

平和な街だ。
親子連れ、恋人たち、社会人、学生。
それぞれがそれぞれに時間を過ごしている。

孤児院に居た頃は滅多に外に出られなかったが、今思うと、それは院長が私を守る為だったのだろう。
そういえば、院長、元気だろうか。
あの子たちは、喧嘩してないだろうか。
最後に会ったのはマフィアに入った頃だから、もう暫く会っていないし、これから先も会える確率は低いだろう。この仕事を続ける以上は。
少し、寂しいな。

否、感傷に浸っていてはだめだ。
黒社会(ここ)で生きると決めたのだから。

それに、会うのは無理でも、稼いだお金を孤児院に寄付することはできる筈だ。
孤児院には大学に行っていると嘘をついているから今はできないが、そのうちできるようになる。
きれいなお金ではないけれど。

そうだ、仕事を頑張らないとな。

到着した店屋の前で意気込んで、その扉を開いた。

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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2019年1月3日 1時

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