123.些細なきっかけ ページ23
余りにも勢いよく落ちてきたそれは、地面に突き刺さるなり、ひびが入って割れた。
「オイ」
砂埃が消えた後、私の横には一人の男がいた。
その小さい身体に見合わず、巨大な力を持つ男である。
「な、ポートマフィアの中原中也？！」
「ご名答。お前ら、此奴に何か用か？」
突然の中也の登場に後退りする男達。
彼らに見せつけるように、中也は体勢を崩して膝立ちになっている私の顎を掬い上げた。
いやいやちょっと待て、気でも狂ったのか？
私が口を開きかけると、目線で制された。
「いや、俺たちは、その、そいつが女かどうか」
「女かどうか？どうだっていいだろそんなの。なァ？」
「いや、えっと」
「あﾞ？俺のに手ェ出すなっつってんだよ。大人しく帰れ。次此奴に声かけたらその瞬間潰してやるよ」
それが最後の一押しとなり、目の前の男たちは蜘蛛の子を散らすように去って行った。
「ありがとな。助かったよ」
中也が差し出した手を取って立ち上がると、彼は複雑そうな顔をした。
「ああ」
「そういう顔をするな。身長はどうにもならないだろ」
「誰もそんな話してねーよ！！」
図星だったんだろう。
あまりいじってやるのも可哀想か。
「ったく、何やってんだよA」
「歩いていたら引き込まれたんだ。不可抗力だろ？」
「そん時に逃げろよ。お前もしかして鈍ってンのか？」
「真逆」
その通りだが、中也のスパルタ訓練を受けるのはきつい。
出来れば穏便に済ませたい。
「それより、私の髪ってそんなに伸びたか？」
伸ばそうとは思っていたが、未だそれ程長くはない筈だ。
「何だ？何かあったのか？」
「いや、先刻彼奴等に女にも見えると云われてな」
「お前は元から女だろうが」
中也が呆れたように云う。
確かにそう云われればそうなんだけど。
「でもそうだな。最近女っぽくなったとは思う」
「初見でも脱がずに判る程にか？」
「何時の話だ」
太宰が云うには最初会った時、中也は私が服を脱ぐ迄、男だと思っていたらしい。
駄目だ、中也は何となく揶揄いたくなる。
「悪い、怒るなよ。冗談だ」
「性質の悪い冗談だな。それより気を付けろよ。またこういうことが起きるかも知れねェ」
「解ってる。上手く対処するさ」
中也は何か云いた気だったが、送ってやるよとだけ云った。
心配は有り難いが、矢張りむず痒い。
余りにも酷くなったら首領に相談すればいい。
この時の私の考えは甘かったと、後に思い知らされた。
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作者名：京beスウィーツ | 作成日時：2019年1月3日 1時
