117.泊まり ページ17
「あ、す、すみません!急に!何でもないです、忘れてください!」
慌てて訂正するが、落ち着いている織田さんはまず、どうかしたのか、と問うた。
それに影響されて、私も落ち着きを取り戻し、卓を挟んで織田さんに向き合った。
「太宰が、織田さん用の着替えを置いておいたからと」
「成る程。確かにそれなら泊まれそうだ」
「え?!」
「何か変なことを言ったか?」
「い、いえ」
ああ、そうだ。
織田さんはそういう人だった。
寝巻がある、だから泊まれる。その事実を認めただけなのに。
まだ冷静にはなれていないのだろうか。
気を静めるために深呼吸をして、織田さんに問う。
「それでは今日、この後どうされますか?」
「Aが構わないのであれば、泊まっていこうと思う。せっかく太宰が着替えも用意してくれたことだしな」
どうしよう、落ち着けない。
むしろ悪化してしまった。
「では、先にお風呂に入ってください。もう沸いていると思います。私は片づけをしますので」
「そうさせてもらおう。色々有難う」
「いえ、大丈夫です」
にっこり微笑んで、風呂場に向かう織田さんを見送った。
て、いや、大丈夫じゃないだろう?!
頭の中がぐちゃぐちゃで整理できない。代わりに机を整理している。
織田さん、泊まっていくって言ったよな?!
え、どうしよう。日頃掃除は徹底しているから全然滞在してもらっても平気なのだが、いや、平気じゃない!
太宰とはまた訳が違うのだ。
ほんの少しの仕種で心臓がばくばくいうのに、一晩過ごせるだろうか?
そもそも寝台はどうするんだ。一つしかないし、私が譲るといっても織田さんは辞退しそうな気がする。でも織田さんを床に寝かせる訳にはいかないし。
恋人なら一緒に寝るべきだろうか?いやでも、太宰とでさえ狭いあの寝台に、織田さんと二人はかなり距離が近くなってしまう。嬉しいことではあるが心臓がもたない。
然も恋人になってまだ日も浅いのに、一緒に寝るだなんて早すぎではないだろうか?これくらい普通なのか?
院長、教えてください!!
一人慌てふためいていると、またメールの着信音がした。
“今頃心中穏やかではないAを想像するだけで楽しいよ。頑張ってね”
院長、この場合携帯を壊しても、罪には問われませんよね?
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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2019年1月3日 1時