【文スト】ポートマフィアの人魚姫～second～ (ページ34)

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泡が八十四ページ34

「此処が？」

「そう。此処が

ーーーー織田作の墓だ」

或る日、太宰とAは海の見える丘に来ていた。
探偵社、ポートマフィア、組合の三つ巴も漸く終わりを迎えた頃である。
其れ迄の間ほぼ太宰の社員寮に籠もっていたAにとっては久し振りの外出となった。

「太宰は約束、覚えててくれたのね」

「言ったろう？私は約束を違えない」

顎に手を当て、恰好つけてみせる太宰にAは笑みを漏らした。

「真逆太宰と日の下を歩けるなんて夢みたい」

「Aは何時迄も慣れないねぇ。私の方こそ夢みたいさ」

太宰はさり気なく唇を奪い、Aは顔を真っ赤に染める。

「だ、太宰っ！」

「ふふ、可愛い」

「人が居ないとはいえ、外なのに！」

「え～、私としては眠り姫を起こして差し上げようと思っただけなのだけどね」

「……莫迦っ」

Aはキッと睨みつけるが太宰は知らぬふりだ。
彼女は諦めたようで、頬を膨らませて大人しくしていた。

「ああ、此処だ」

真っ白な墓標の、たった一つを見つけ出し、太宰は懐かしむような目を向ける。

「織田作の、眠る場所……」

「うん。四年振りだろう？積もる話もあるだろうから、暫く席を外すよ。終わったら呼んで呉れ。報告は二人でしよう」

「わかった。ありがとう」

太宰はすぐに立ち去り、Aは一人墓標に向き合った。

「織田作、久し振りね。私もう二十になったのよ。貴方は私を恐れなかった人で、とても強い人で、とても優しい人で……多分、貴方が私の一番新しい友達よ。そして何も知れないまま離れてしまった友達。あの時は辛かった。何も言わずに消えてしまうから。太宰の消える原因にもなってしまったから。あの頃の私は我儘で、織田作の事を話して呉れなかった太宰も、勝手に死んでしまった織田作も恨んだわ。……ごめんなさい。ごめんなさい、織田作……こんな私を許して。未だ貴方に会えるかも知れないと、今日この墓石を見る迄、期待していた私がいたの。貴方の死は、貴方が考えた結果だったのに、生きていて欲しかったと思ってしまう。屹度此れからもそう思うと思う。でも、私、自由になって、太宰と生きていく、その内に貴方の考えを理解出来るようになると思うの。貴方を知って行けると思うの。だから、私が其方に逝くその時迄、私を私達を見守って。未だ我儘だわ……ごめんなさい。最後に、織田作。一緒に遊んで呉れてありがとう」

その時、彼女の涙を拭うように、柔らかな風が吹いた。