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泡が六十四 ページ14

「それで、何が、どうして、こうなの?」


翌日。
Aは建物内の訓練場で中原の蹴りを避けながら云った。


「あぁ?!お前の落ちた体力を戻そうっつったらこうなんだろ!」


と、今度は拳が飛んで来た。




昨日の晩である。

中原は抗争の報告も兼ねて、首領の部屋を訪れていた。


「……成る程。ご苦労様。もう云っていいよ」


森がにこやかに云うが、中原は緊張した面持ちでその場に佇んでいた。


「何かね?」


森が、特に不思議そうでもなさそうに問うた。


「一つ、お願いがあります」

「云ってご覧」

「はい。海津Aについてなのですが、もう少し訓練をさせてやって欲しいのです」


中原は森を見据えて云った。
森のほうは平静の表情を保った儘、


「其の話については以前話したと思うけど……彼女がそう云ったのかな?」

「いえ、間違えました。Aをもう少し訓練したいのです」

「ふむ、その事に関しては説明をした筈だが?」

「勿論、理解しています。然し、万が一と云う事も有り得ましょう。以前Aの思考を操った異能者は外部から建物内に侵入していました。経路が見つかり対策もされていますが、又別経路からの侵入がないとは云い切れません」

「確かに、彼女に人をつけているとは云え、大人数で来られると厄介だしねぇ。となると最後は彼女自身で対処しなければならない、か」

「ええ」


森は暫し黙考した後、


「いいよ」

「え」

「そうしよう。何せ組織の為に半年間も遠征してくれていた君が云うんだ。私もそれくらいきいてあげたいからね」


中原も驚くほど直ぐに、結論を出したのだ。




「っぶな!」


Aは寸ででよけて、反撃しようとするが、身体が鈍って思うように動かない。
彼女の鈍い蹴りを片手で受けとめ乍ら、中原は考えていた。


あの首領が、Aが逃げる可能性を高めると危険視していた訓練をあれだけのやり取りで認めてくれるとは思えない。
屹度何か思惑が有るはずなのである。
又、中原が理由にしたことついて考えなかった事もないだろう。

では何故許可が下りたのか。
中原にはわからない。
取り敢えず、そうしても良いと判断したからそうしたのだろうという事位しか、首領の考えを思惑を計り知る事ができるのは彼の知る限り太宰しか居ない。
恐らく自分には到底無理な事だと云う事は解りきっている。

だから其処は疑いをかけつつも、Aの訓練をする。
其れが彼自身が出来る事であり、したいことであったからだ。

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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2017年9月24日 9時

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